ヒドロキシクロロキン適正使用の手引き

適応

  1. CLE
    限局的な CLEの場合はステロイド等の外用剤が効果不十分な場合や外用剤の使用が適切でない場合.
  2. SLE
    特に皮膚症状・倦怠感等の全身症状・筋骨格系症状等がある場合

禁忌

  1. 本剤成分への過敏症の既往
  2. 網膜症(SLE網膜症を除く)or 既往含む黄斑症
  3. 6才未満の幼児
    4-アミノキノリン化合物の毒性作用に感受性が高いため.
    1-2gでも致死的という報告もあるため誤って口に入れないように指導する.

慎重投与

  1. キニーネ過敏症
    皮膚反応のリスクが上がる.
    トニックウォーターアレルギー既往に注意
  2. グルコース -6- リン酸脱水素酵素(G6PD)欠損症
    溶血を起こすおそれがある.
  3. ポルフィリン症
  4. 乾癬
  5. 肝機能障害または腎機能障害
  6. 胃腸障害・神経系障害(癲癇・重症筋無力症他)・血液障害
  7. SLE網膜症を有する患者、眼障害のリスク因子を有する患者
  8. 妊婦

投与前スクリーニング

網膜症,黄斑症のスクリーニング

視力検査・視野検査(特に中心視野)・スペクトラルドメイン光干渉断層計(SD-OCT)・眼底検査・細隙灯顕微鏡検査・色覚検査・眼圧検査

投与量

理想体重 1kg あたり 6.5mg を超えない量(200mg~400mg/日)を 1 日 1 回で投与する。

女性の理想体重(kg)=(身長(cm)ー100)x0.85

男性の理想体重(kg)=(身長(cm)ー100)x0.9

理想体重 性別・身長と理想体重の対応表 1日量
女性 男性
31kg以上46kg未満 136cm以上154cm未満 134cm以上151cm未満 1錠(200mg)
46kg以上62kg未満 154cm以上173cm未満 151cm以上169cm未満 1錠と2錠を1 日おき(300mg)
62kg以上 173cm以上 169cm以上 2錠(400mg)

糸球体濾過量(GFR)が 30~50 ml/min/1.73 m2 では減量,30 ml/min/1.73 m2 では投与しないことを考慮する.

実体重が理想体重を大きく下回る患者に長期投与している場合において,理想体重に基づく投与量を 1 段階下げることを考慮する.

脂肪織の分布が小さく,投与量の20%程度が未変化対として尿中に排泄される

血中濃度が平衡状態に達するのに4ヶ月以上要し,効果発現には4-8週かかる.

単回投与時の半減期は40日程度.

副作用

初期に注意が必要な副作用

  1. 消化器症状
    一時減量や中止・漸増などで通常継続可能.
  2. 皮膚過敏反応
    1~4週間後に多い.必ず中止.重症例ではステロイド投与なども検討.
  3. 霧視・視調節障害
    運転等に注意するように指導.眼科受診.

長期に注意が必要な副作用

  • 網膜症
  • ミオパチー・ニューロミオパチー
    脱力やCK上昇.必ず中止.
  • 心毒性心筋症(ときに致死性)や伝導障害
    必ず中止.
  • 低血糖
    糖尿病用薬の併用の有無を問わない.必ず中止.低血糖時はすぐに糖を補充するなどの処置を行う.
  • 骨髄抑制
    血小板減少症、無顆粒球症、白血球減少症、再生不良性貧血など.必ず中止.
  • 色素沈着
    皮膚や粘膜に青黒い色素沈着.
  • 視聴節障害,霧視等の視覚異常や低血糖症状が現れることがあるので,自動車の運転等危険を伴う機械の操作や高所での作業等には注意をさせること.
  • 定期的に採血を行い上記をスクリーニングが必要

網膜毒性

初期の変化

中心視野検査で傍中心暗点輪状暗点、SD-OCTで局所的な網膜層における菲薄化である (5 年以上の治療で約 5%).

進行時の変化

特徴的なBull’s eye(標的黄斑症)と呼ばれる黄斑周囲(傍中心窩)の顆粒状変化をきたし(5 年以上の投与で約 1-2%)、末期には周辺部網膜までメラニン色素の沈着を伴った網脈絡膜萎縮きたす.

障害される部位等に人種差が存在
  • 欧米人
    黄斑中心部に病変が出現(傍中心型)
  • アジア系人種
    黄斑辺縁部に病変(黄斑辺縁型)

アジア系人種の場合,静的視野計による中心視野検査では中心 10°に加えて中心30°での検査も検討する.

投与中のモニタリング

少なくとも年に 1 回、定期的に眼科検査を実施
以下の網膜症のリスクを有する患者ではより頻回(半年に1回など)に検査を行う.

  1. 腎機能障害・肝機能障害のある患者
  2. 累積投与量が200gを超えた患者
  3. 視力障害のある患者
  4. 高齢者

作用機序

ヒドロキシクロロキンの薬理作用は多彩であり、その分子メカニズムについては十分明らかではない。

以下の2点などが言われている.

  1. TLRの機能の阻害SLEにおいてはDNA,RNAに対する自己抗体が産生されるが,これら自己抗体と核酸による免疫複合体はエンドソームにおいてTLRにより認識され,I 型インターフェロン産生を誘導する。ヒドロキシクロロキンはエンドソームのpHを上昇させることにより,または核酸への直接結合によりTLRの活性化阻害を行う.
  2. エンドソームpH上昇作用を通じて抗原提示を阻害する.

妊娠,授乳への対応

  • ヒドロキシクロロキンは胎盤を通過する.
  • 妊娠初期の催奇形性と妊娠中期以降の胎児毒性の二つに分けて考える必要がある.
  • 化学構造及び薬理学的作用が類似しているクロロキンでは,遺伝毒性や生殖発生毒性が示唆されている
  • 小規模ながら複数の前向きコホートないしはケースシリーズで明らかな催奇形性ならびに胎児毒性は示されていない
  • 胎児毒性として児の目の障害が懸念されるが、それを否定する報告がある.
  • SLE の妊娠管理ならびに抗 SS-A 抗体関連心ブロックの発生抑制においてヒドロキシクロロキンの有効性を示す研究結果が報告されている.
  • SLE 患者では,妊娠中本剤を継続した群が中止した群より病勢が安定し,ステロイドの増量が不要で,児の予後も良かったとの報告も多数ある.
  • 基本的には妊娠や授乳の際は投与を控え,ヒドロキシクロロキン使用中は避妊を推奨する.
  • 現病の治療に必須である場合は,妊娠中,授乳中であっても使用は可能.
  • 流産が発生率が15%,先天異常の自然発生率が2%であることを説明しておく必要がある.

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