自己炎症性疾患

皮膚科専門医試験対策

自己炎症疾患群

  • 反復もしくは遷延する発熱を特徴とする全身性炎症疾患
  • 感染症や悪性腫瘍の腫瘍熱ではない.
  • 自己免疫性疾患とはことなり,自己抗体や自己反応性T細胞などは検出されない
  • 自然免疫の先天異常の存在

IL-1β活性化およびⅠ型インターフェロン活性化による自己炎症性疾患

  原因 疾患 遺伝子 遺伝形式

インフラマソーム

IL-1β異常

クリオピリン クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS) 家族性寒冷誘発自己炎症性症候群(FCAS) NLRP3 AD
Muckle-Wells症候群
CINCA症候群
ピリン 家族性地中海熱(FMF) MEFV AR
TNFR1 TNF受容体関連周期熱症候群(TRAPS) TNFRSF1A AD
メバロン酸キナーゼ メバロン酸キナーゼ欠損症(MKD) 高IgD症候群(HIDS) MVK AR
メバロン酸尿症(MA)
不明 Schnitzler症候群
I型インターフェロン異常 プロテアソーム プロテアソーム関連自己炎症症候群 中條ー西村症候群
(CANDLE症候群
,JMP症候群)
PSMB8 AR
核酸処理不全 プロテアソーム関連自己炎症・免疫不全症候群 エカルディ・グティエール症候群(AGS) TREX1,RNASEH2A-C,SAMHD1,ADAR,IFIH AR(一部AD)
乳児期発症STING関連血管炎 STING1  
家族性凍瘡様スープス(FCL) TREX1,SAMHD1,TMEM173   

インフラマソーム IL-1β異常による疾患

クリオピリン関連周期熱症候群(Cryopyrin-associated periodic syndrome; CAPS)

  • NLRファミリーのシグナル伝達に関わるドメインpyrinを持った遺伝子で3番目にクローニングされたことによって命名されたNLRP3遺伝子変異による常染色体優性遺伝性疾患.
  • Cryopyrinは冷たい(Cryo)pyrin
    cf. 家族性地中海熱はpyrin
  • 重症度によって,家族性寒冷誘発自己炎症性症候群(familial cold-induced autoinflammatory syndrome;FCAS),Muckle-Wells症候群,chronic infantile neurological cutaneous articular(CINCA)症候群の3つに分類される.
  • FCASは全身の寒冷曝露によって,関節痛とアミロイドーシスをきたす疾患.
  • Muckle-Wells症候群はFACSに感音性難聴とアミロイドーシスをきたす疾患.
  • CINCA症候群はMWSに,中枢神経症状とともに関節症状が著名になる.
  • 治療は抗IL-1抗体製剤.国内ではカナキヌマブのみ承認.
  FCAS Muckle-Wells症候群 CINCA症候群
皮疹 +(寒冷刺激による) ++ +++
関節症状 ± +++
軟骨病変 +++
感音性難聴 ++ +++
慢性髄膜炎 ± +++
眼症状 +++
アミロイドーシス ++

家族性地中海熱(familial mediterranean fever; FMF)

  • pyrinをコードするMEFV遺伝子変異による常染色体劣性遺伝性疾患.
  • 丹毒様紅斑が下腿から足首にかけて発作時に2-3日続く.
    しばしば痛風と誤診される.
  • 腎アミロイドーシスを高頻度で認める.尿蛋白に注意.
  • 胸膜炎,心膜炎,無菌性腹膜炎など
  • コルヒチンが著効

TNF受容体関連周期熱症候群(TRAPS)

  • TNFRSF1A遺伝子変異による常染色体優性遺伝性疾患.
  • 遊走性紅斑
  • 3日以上続く発熱
  • 結膜充血
  • 成人Still病に類似するが,フェリチンは上昇しない.
  • コルヒチンは反応しにくく,ステロイド内服やエタネルセプトが有効.

高IgD症候群(Hyper IgD Syndrome; HIDS)

  • MVK遺伝子変異による常染色体劣性遺伝性疾患.
  • びまん性の丘疹性紅斑,点状出血をともないときに潰瘍化
  • 発熱,頭痛
  • 高度な神経障害はきたさない.
  • 尿中メバロン酸の上昇
  • 重症型がメバロン酸尿症(MA)

Schnitzler症候群

  • 慢性蕁麻疹様皮疹
  • モノクローナルIgG,IgMの増加
  • 周期性発熱,骨痛
  • 病理で好中球浸潤
  • 好中球優位のリンパ球増加,CRP上昇
  • 発症の中央値が50歳
  • NLRP3やMYD88などの遺伝子変異の報告はあるが現時点では不明
  • 治療薬はまだない.抗IL-1抗体製剤やIL-6抗体製剤(トシリズマブ)などが試されている.
抗IL-1抗体製剤
  カナキヌマブ リロナセプト アナキンラ
標的分子 IL-1β IL-1α,IL-1β,IL-Ra IL-1レセプター
半減期 21-28日 6日 4-6時間
投与方法 8wごとに皮下注 週1回皮下注 毎日皮下注
適応疾患 CAPS,HIDS,TRIPS,FMF,全身型JIA 未承認 未承認

遺伝性周期熱症候群の熱型パターン

Hoffman H et al. Nat Rev Rheumatol. 2009 May;5(5):249-56. より引用

FMF;家族性地中海熱
TRAPS;TNF受容体関連周期熱症候群
HIDS;高IgD症候群
PFAPA;周期性発熱・アフタ性口内炎・咽頭炎・リンパ節炎症候群
FCAS;家族性寒冷蕁麻疹
MWS;Muckle-Wells症候群

プロテアソーム関連自己炎症症候群

自己炎症性脂肪萎縮症

中條ー西村症候群(CANDLE症候群,JMP症候群)
  • 自己炎症性脂肪萎縮症
  • PSMB8(proteasome subunit β-type 8)遺伝子変異による常染色体劣性遺伝性疾患
  • 幼小児期に凍瘡様皮疹と発熱で発症.皮疹と弛張熱を不定期に繰り返す.
  • 成長に伴い,脂肪萎縮と手指四肢の関節の拘縮をきたす.
  • 早期より大脳基底核の石灰化を認めるが,精神発達遅滞は認めない.(エカルディ・グティエール症候群との鑑別点)
  • 皮疹の病理は,真皮から筋層に至る緻密で多彩な炎症細胞浸潤と血管内皮の増殖を伴う血管障害を認める.
  • 有効な治療法はないが,メトトレキサートや,IL-6受容体抗体製剤やJAK阻害薬が有効であったという報告がある.
  • R1-67
OTULIN関連自己炎症性症候群
  • OTULIN遺伝子変異による常染色体劣性遺伝性疾患.
  • 脱ユビキチン化酵素であるOTULINの機能不全による.
  • プロテアソーム関連自己炎症性症候群と症状が類似.
  • 出生半年くらいまでに,発熱と膿疱,脂肪織炎,結節性紅斑などの好中球皮膚症,CRP上昇などをみとめる.
  • 成長障害,脂肪萎縮,関節炎,下痢,嘔吐,肝肥大,無菌性脳炎もみられる.

凍瘡様皮疹を伴う遺伝性症候群

凍瘡様ループスは寒冷によって誘発され,悪化すると自壊,潰瘍化する.

治癒後に特徴的な色素沈着や瘢痕を残す皮疹

  1. chilblain lupus
    皮膚エリテマトーデスの一病型
  2. lupus pernio
    皮膚サルコイドーシスのびまん浸潤型

の2つに分類され,chilblain lupusの中に家族性のものがあり,それらの原因遺伝子が同定され, エカルディ・グティエール症候群(AGS) や,乳児期発症STING関連血管炎 との関連が明らかになった.

エカルディ・グティエール症候群(AGS)
  • 原因遺伝子によってAGS1-7型まである.
  • TREX1遺伝子変異のものが,AGS1型で,本邦で最多.
  • ほとんどが常染色体劣性遺伝性疾患
  • 通常脂肪萎縮はなく,精神発達遅延をきたす点で,中條-西村症候群と鑑別
乳児期発症STING関連血管炎
  • STING遺伝子変異による常染色体劣性遺伝性疾患.
  • 出生後8週間以内に皮膚症状と呼吸器症状で発症.
  • 寒冷刺激を契機に指趾先端に死斑,潰瘍,壊死
  • 病理では微小血管周囲に核塵を伴う好中球,リンパ球浸潤やフィブリン析出.
  • 間質性肺炎
家族性凍瘡様スープス(FCL)
  • AGSとSLEの亜型で自己炎症性と自己免疫性の中間のような疾患
  • 神経症状はない

自己炎症性好中球性皮膚症

  壊疽性膿皮症(Pyoderma gangrenosum)+膿疱性ざ瘡(acne) 化膿性汗腺炎(Hidradenitis suppurativa) 化膿性関節炎(pyogenic arthritis) 脊椎関節炎(spondyloarthritis) 乾癬性関節炎(Psoriatic arthritis) 遺伝子変異
  PA SH

PA

S

PsA  
PAPA PSTPIP1
PASH PSTPIP1
PAPASH PSTPIP1
PASS
PsAPASH

自己炎症性肉芽腫症

ブラウ症候群(Blau syundrome)

  • NOD2遺伝子変異による常染色体優性遺伝性疾患
  • 孤発例は若年性サルコイドーシスと呼ばれてきた.
  • 皮膚症状,関節症状,眼症状を3兆とする.この順に進行.
  • 両側肺門部リンパ節腫脹はみられない.
皮膚症状
  • 4歳以前にそう痒などの自覚症状を伴わない充実性紅色丘疹から始まることが多い.
  • BCG接種が契機にあるときがあり,結核疹の腺病性苔癬に酷似する.
  • 組織は真皮に巨細胞を混じた類上皮性肉芽腫を認める.
  • 自然消退もあるが,ステロイド外用の反応性に乏しい
関節症状
  • 対称性の多関節炎が生じる.
  • 手関節・足関節背面の無痛性・嚢腫状の主張,手指足趾の基部に向かってのソーセージ様腫脹は特徴的
  • 関節腫脹があっても関節痛が目立たず,変形を伴っても当初は多動が妨げられない点,手背や足背に疼痛や熱感を伴わない嚢腫状の腫瘤がみられる点は診断的価値が高く,若年性特発性関節炎との鑑別で重要.
  • 関節滑膜の炎症はまれで,病初期においては腱鞘滑膜が主に侵される.
眼症状
  • ぶどう膜炎,虹彩後癒着,結膜炎,網膜炎,視神経萎縮など
  • 長期にわたると二次性白内障や緑内障で失明にいたる.

自己炎症性組織球症

H症候群(pigmented hypertrichosis with insulin-dependent diabetes; PHID, Faisalabad histocytosis, Rosai-Dorfman病)

  • SLC29A3遺伝子変異による症候群
  • 常染色体劣性遺伝.

H症候群

  1. 左右対称性の進行性皮膚硬化,色素沈着 Hyperpigmentation
  2. 多毛 Hypertrichosis
  3. 肝脾腫 Hepatosplenomegaly
  4. 心奇形 Heart anomaly
  5. 感音性難聴 Hearing loss
  6. 性腺発育不全 Hypogonadism
  7. 低身長 low Hight
  8. 外反母趾 Hallux valgus
  9. 高血糖 Hyperglycemia

を特徴とする.

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