R1-2019年度皮膚科専門医認定試験問題 1-20

令和1年度(2019年度)皮膚科専門医試験

手軽に答え合わせのみをしたい人は、目次を見てください.

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質問、意見、間違いなどがあればコメント欄ないしtwitterなどからコメントやDMいただけたら幸いです.

  1. 選択問題
    1. 問題 1.特発性後天性全身性無汗症において認められる頻度が最も低いのはどれか.
      1. 5
    2. 問題 2.45 歳の女性.尋常性乾癬に対して抗 IL-17A 抗体の自己注射を続けている.最近,舌のほぼ全面に白苔が出現し,違和感があるため受診した.乾癬の悪化はない.適切な治療はどれか.
      1. 3
    3. 問題 3.全身または局所の多汗を伴いやすいのはどれか.3 つ選べ.
      1. 1.2.3
        1. 多汗症
        2. 無汗症,乏汗症
    4. 問題 4.角層には天然保湿因子(natural moisturizingfactor)が含まれている.その主成分はどれか.
      1. 3
        1. 角質の水分を保つ保湿因子
    5. 問題 5.男性型脱毛症に対する内服薬について正しい組み合わせはどれか.1つ選べ(2つ選べからの訂正).
      1. 4
    6. 問題 6.尋常性痤瘡治療ガイドライン(日本皮膚科学会2017 年版)において推奨度の最も高い内服抗菌薬はどれか.
      1. 3
    7. 問題 7.図 1 はヒト頭皮の成長期毛包のヘマトキシリン・エオジン染色像である.矢印で提示した①~⑤の構造物について正しいのはどれか.2 つ選べ.
      1. 2.4
    8. 問題 8.脱毛症について正しいのはどれか.
      1. 3
    9. 問題9.毛包・脂腺の発生について正しいのはどれか.
      1. 4
    10. 問題 10.日本人のスキンタイプ(JST)-II で,光線過敏のない健常者にみられる反応はどれか.
    11. 問題 11.紫外線について正しいのはどれか.2つ選べ.
      1. 3.4
    12. 問題 12.69 歳の日本人女性.10 歳頃から顔面にそばかすのような小色素斑がみられ,適宜サンスクリーンを使用していたが,色素斑は徐々に増加している(図 2).50 歳以降,3 度にわたり顔面に生じた基底細胞癌の切除術を受けている.手背・足背に皮疹はなく,神経学的な異常はない.患者細胞を用いた検査で予想される結果として最も考えられるのはどれか.
      1. 5
    13. 問題 13.メラニン合成について正しいのはどれか.
      1. 5
    14. 問題 14.掌蹠の表皮に発現するタイプ I ケラチンはどれか.2 つ選べ.
      1. 3.4
    15. 問題 15.Cornified cell envelope の主成分はどれか.
      1. 2
    16. 問題 16.図 3 にケラチン構造の模式図を示す.ケラチンの重合形成に重要で,ケラチン異常症の症例数が多い変異部位はどれか.
      1. 3
    17. 問題 17.アトピー性皮膚炎の痒みに直接関与すると考えられているサイトカインはどれか.3 つ選べ.
      1. 1.3.4
    18. 問題 18.T 細胞の機能抑制あるいは疲弊化に関与するのはどれか.3 つ選べ.
      1. 3.4.5
    19. 問題19.アレルゲンコンポーネント特異的IgE検査のうち正しい組合せはどれか.2 つ選べ.
      1. 1.2
    20. 問題 20.60 歳の男性.両親はいとこ婚.幼少期から図4a に示す皮疹を露光部を中心に認める.病理検査では図 4b に示す所見が得られた.この疾患は,ある病原体に対する先天性免疫不全により発症する.その病原体はどれか.
      1. 1

選択問題

問題 1.特発性後天性全身性無汗症において認められる頻度が最も低いのはどれか.

1. 腋窩の発汗
2. 血清 IgE 値の上昇
3. 掌蹠の精神性発汗
4. 発汗時の皮膚のピリピリする痛み
5. 病理組織像で汗腺周囲の好酸球浸潤

5

厚生労働省163特発性後天性全身性無汗症新・皮膚セミナリウム特発性後天性全身性無汗症参照

  1. 〇 腋窩の発汗,掌蹠の精神性発汗は保たれる.
  2. 〇 AIGAの9割を占めると言われる,特発性純粋発汗機能不全(idiopathic pure sudomotor fairlure:IPSF)では血清総 IgE値が高値の場合がある.CEAとの関連も示唆されている(マルホ皮膚科セミナー「特発性後天性全身性無汗症におけるバイオマーカー」参照).
  3. 〇 1同様
  4. 〇 コリン性蕁麻疹がしばしばみられる.
  5. ✕ 汗腺周囲のリンパ球浸潤がみられる.
後天性特発性全身性無汗症(Acquired Idiopathic Generalized Anhidrosis:AIGA)診断基準
A 明らかな原因なく後天性に非髄節性の広範な無汗/減汗(発汗低下)を呈するが,発汗以外の自律神経症候および神経学的症候を認めない.
B ヨードデンプン反応を用いたミノール法などによる温熱発汗試験で黒色に変色しない領域もしくはサーモグラフィーによる高体温領域が全身の 25%以上の範囲に無汗/減汗(発汗低下)がみられる.
A+Bをもって AIGA と診断する。
参考項目
  1. 発汗誘発時に皮膚のピリピリする痛み・発疹(コリン性蕁麻疹)がしばしばみられる.
  2. 発汗低下に左右差なく,腋窩の発汗ならびに手掌・足底の精神性発汗は保たれていることが多い.
  3. アトピー性皮膚炎は AIGA に合併することがあるので除外項目には含めない.
  4. 病理組織学的所見:汗腺周囲のリンパ球浸潤,汗腺の委縮,汗孔に角栓なども認めることもある.
  5. アセチルコリン皮内テストもしくは QSART で反応低下を認める.
  6. 抗 SS-A 抗体陰性,抗 SS-B 抗体陰性,外分泌腺機能異常がないなどシェーグレン症候群は否定する.

問題 2.45 歳の女性.尋常性乾癬に対して抗 IL-17A 抗体の自己注射を続けている.最近,舌のほぼ全面に白苔が出現し,違和感があるため受診した.乾癬の悪化はない.適切な治療はどれか.

1. 抗菌薬を投与する.
2. 抗 TNF-α 抗体へ変更する.
3. 抗真菌薬を口腔内に投与する.
4. イソニアジド(INH)予防投与を開始する.
5. 生物学的製剤を中止し,PDE4 阻害薬を使用する.

3

口腔カンジダ症 あた539

カンジダに対する局所免疫には,Th17細胞と,それが産生するIL-17が重要(慢性皮膚粘膜カンジダ症参照)で,この免疫機構をブロックする抗IL-17A抗体や抗IL-17RA抗体を投与時には,カンジダに注意する.

各バイオの特徴は,生物学的製剤まとめ参照

  1. 細菌感染ではない.
  2. 直ちに他のバイオにスイッチする必要はない.
  3. 結核ではない.
  4. 直ちにバイオを中止する必要はない.

問題 3.全身または局所の多汗を伴いやすいのはどれか.3 つ選べ.

1. 妊娠
2. 糖尿病
3. 腋臭症
4. コリン性蕁麻疹
5. アトピー性皮膚炎

1.2.3

  1. 〇 多汗も乏汗も伴う.
  2. ✕ あた133 発汗障害や後天性無乏症を伴うことがある.
  3. 乏汗
多汗症

 

多汗症 あた362 エクリン発汗が亢進

全身性多汗症

  • 高温多湿の環境や運動時などの交感神経緊張時には生理的に多汗になる.

甲状腺機能亢進症

糖尿病,低血糖

感染症

神経変性疾患(Parkinson病など)

悪性リンパ腫

妊娠

肥満

薬剤(解熱薬,ステロイド,向精神病薬)

局所性多汗症

  • 掌蹠,腋窩,顔面など体の一部に限局性に多汗.
  • 緊張や運動などで増悪(情緒性発汗)

掌蹠多汗症

  • アトピー素因,掌蹠角化症などに合併することがある.

片側性多汗症

  • 半身不随はParkison病などの抹消神経の片側障害によって身体の片側に多汗が生じる.
無汗症,乏汗症
無汗症・乏汗症 あた363
先天的な汗線の機能欠如

無汗性外胚葉形成異常症

先天性無痛無汗症

代謝異常

甲状腺機能低下症

脱水症,熱射病

Fabry病

新崎病

糖尿病

神経疾患

体温調節中枢ないし脊髄の障害

アルコール性神経炎

ハンセン病

特発性後天性全身性無干症

汗孔,導管の閉塞

魚鱗癬

脂漏性皮膚炎

アトピー性皮膚炎,紅皮症

乾癬など

汗腺の萎縮,破壊

強皮症

シェーグレン症候群

皮膚老化など

問題 4.角層には天然保湿因子(natural moisturizingfactor)が含まれている.その主成分はどれか.

1. 乳酸
2. セラミド
3. アミノ酸
4. 分泌型 IgA
5. 低級脂肪酸

3

あた9

顆粒細胞内のケラトヒアリン顆粒にフィラグリンの前駆体であるプロフィラグリンが大量に存在し,角化する際の脱リン酸化などの作用によりフィラグリンに分解される.遊離されたフィラグリンが,角層細胞の細胞質内でケラチン線維を凝集させたのち,角層上層でアミノ酸などに分解される.このアミノ酸が,保水機能,紫外線吸収能を持ち天然保湿因子と呼ばれる.

角質の水分を保つ保湿因子

角質細胞間脂質,皮脂膜,天然保湿因子の主に3つに分けられる.

角質細胞間脂質
  • セラミドが主成分
  • 炎症,2型サイトカインで減少
皮脂膜
  • 思春期以降に,性ホルモンなどによって皮脂腺から分泌され皮膚の表面を覆う.
天然保湿因子
  • フィラグリンなどのアミノ酸が主成分
  • 日本のAD患者の約3割にフィラグリン遺伝子変異がみられた.
  • 炎症,2型サイトカインで減少

問題 5.男性型脱毛症に対する内服薬について正しい組み合わせはどれか.1つ選べ(2つ選べからの訂正).

  フィナステリド デュタステリド
1.後発品 あり なし
2.女性への効果 なし あり
3.血清 PSA 値の低下 あり なし
4.5-α 還元酵素 I 型阻害 なし あり
5.5-α 還元酵素 II 型阻害 なし あり

4

男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版参照

正しくは,

  フィナステリド デュタステリド
1.後発品 あり あり
2.女性への効果 なし なし
3.血清 PSA 値の低下 あり あり
4.5-α 還元酵素 I 型阻害 なし あり
5.5-α 還元酵素 II 型阻害 あり あり

※デュタステリドのジェネリックが認可されたことにより,解答は1つになりました.

問題 6.尋常性痤瘡治療ガイドライン(日本皮膚科学会2017 年版)において推奨度の最も高い内服抗菌薬はどれか.

1. ファロペネム
2. ミノサイクリン
3. ドキシサイクリン
4. クラリスロマイシン
5. ロキシスロマイシン

3

尋常性痤瘡治療ガイドライン 2017参照

A ドキシサイクリン(ビブラマイシン)
A* ミノサイクリン(ミノマイシン)
B ロキシスロマイシン(ルリッド)
ファロペネム(ファロム)
C1 テトラサイクリン(アクロマイシン)
エリスロマイシン(エリスロマイシン)
クラリスロマイシン(クラリス,クラリシッド)
レボフロキサシン(クラビット)
トスフロキサシン(オゼックス,トスキサシン)
シプロフロキサシン(シプロキサン)
ロメフロキサシン(ロメフロン)
セフロキシム アキセチル(オラセフ)

問題 7.図 1 はヒト頭皮の成長期毛包のヘマトキシリン・エオジン染色像である.矢印で提示した①~⑤の構造物について正しいのはどれか.2 つ選べ.

1. ①は,毛峡部レベルで消失する.
2. ②は,トリコヒアリン顆粒を豊富に含有する.
3. ③には,デスモグレインは発現しない.
4. ④は,休止期毛包にも存在する.
5. ⑤に,毛包上皮幹細胞が局在する.

2.4

あた20-24

①外毛根鞘 ②内毛根鞘(好酸性に染まっており,トルコヒアリン顆粒が豊富にあることを示している.) ③毛皮質 ④毛乳頭 ⑤毛母細胞

  1. ✕ 外毛根鞘は表皮と連続する.
  2. ○ 好酸性のトルコヒアリン顆粒が病理で豊富に見えている.
  3. ✕ 毛皮質にはデスモグレイン4が豊富に局在しており,常染色体劣性遺伝のタイプの連珠毛の原因遺伝子となっている.
  4. 〇 毛乳頭はすべての毛周期で存在する.
  5. ✕ 毛隆起(バルジ領域)に毛包上皮幹細胞が局在する.熱傷などで表皮が破壊されていても,バルジ領域が生き残っていると,バルジの幹細胞が表皮を供給する.色素幹細胞も局在する.

問題 8.脱毛症について正しいのはどれか.

1. 抜毛症は眉毛・睫毛ではみられない.
2. 先天性三角形脱毛の病変部では軟毛はほとんどみられない.
3. 日本人における先天性乏毛症では LIPH 遺伝子変異の頻度が高い.
4. 円形脱毛症ではダーモスコピー上 follicular microhemorrhage がよくみられる.
5. 円形脱毛症に対するステロイドパルス療法後は速やかにステロイド内服療法に移行する.

3

  1. ✕ あた371 毛を抜く癖があればとこでも見られる.
  2. ✕ あた370 生下時~生後数年で前頭部や側頭部に類円形の不完全脱毛斑を認める.白色の軟毛がみられる.
  3. 〇 あた371
  4. ✕ follicular microhemorrhageは抜毛症の所見で,機械的に毛を抜いた際に毛の周囲の毛細血管が破綻することによって生じる所見.
  5. ✕ ステロイドパルス単体で行うことの方がおおい.

問題9.毛包・脂腺の発生について正しいのはどれか.

1. 頭部に最初に現れる.
2. 脂腺は上面から生じる.
3. 皮表に対して垂直に伸びる.
4. 胎生 9 週ぐらいで初めて現れる.
5. 胎生 7 か月で全身の毛包の発生が終わる.

4

  1. 毛は,9-12週で眉毛,上口唇,オトガイから発生し,次いで顔頭部そのたに毛原基/毛芽が下方に向かって突出してくる.
  2. 脂腺は毛芽出現4週後に毛球性毛杭の下面でアポクリン汗原基の下方に突出してくる.導管は毛管に近接した部分の細胞の崩壊により形成される.出生時までは胎児に比して大きく胎脂を分泌する.
  3. 表皮に約45度の方向に進展.
  4. 4-5ヶ月で全身の毛包の発生が終わる.

問題 10.日本人のスキンタイプ(JST)-II で,光線過敏のない健常者にみられる反応はどれか.

1. 20 J/cm2 UVA 照射直後の色素斑
2. 20 J/cm2 UVA 照射翌日の紅斑
3. 20 mJ/cm2 UVB 照射直後の色素斑
4. 20 mJ/cm2 UVB 照射翌日の紅斑
5. スライドプロジェクター 5 分照射直後の膨疹

あた84.107.230

  • MED: minimal erythema dose 最小紅斑量
    UVBを照射24時間後に紅斑を生じるのに必要な最低量
    日本人ではUVB 60-100mJ/cm2
    これが低下していると光線過敏症
  • MRD: minimal response dose 最小反応量
    UVA 10-15J/cm2
    これ以下の照射量で24-72時間後に紅斑が見られた場合に光線過敏
  • MPD: minimal phototoxic dose 最小光毒量
    ソラレンを使用した状態で照射を行い,紅斑がでる最小UVA
    PUVA療法を行う前に確認する.
  • 可視光線による反応
    スライドプロジェクターの光を15-20分照射して反応が生じるかをみる.
    慢性光線性皮膚炎や晩発性ポルフィリン症の一部でみられる.

問題 11.紫外線について正しいのはどれか.2つ選べ.

1. 波長は 400 nm 以上である.
2. 波長は長い方から,UVC>UVB>UVAの順である.
3. UVA は,UVB よりも窓ガラスを通過しやすい.
4. UVAは,UVBよりも外因性光線過敏症を起こしやすい.
5. UVBは,UVAよりも真皮の深いレベルまで到達する.

3.4

  1. 紫外線は100-400nm
  2. UVC<UVB<UVA
  3. 波長が長いほうがより深く到達する.
  1. UVC
    表皮のみに作用し細胞毒性が強い.オゾン層で遮断され地表にはほとんど届かない.
  2. UVB
    地表に届く紫外線の5%
    細胞の核内にあるDNAに直接吸収されてDNA損傷する.
  3. UVA
    地表に届く紫外線の95%.
    生体内の様々な分子に吸収され,その結果生じる活性酸素を介して細胞の膜脂質や蛋白やDNAなどに酸化的損書を与える.

問題 12.69 歳の日本人女性.10 歳頃から顔面にそばかすのような小色素斑がみられ,適宜サンスクリーンを使用していたが,色素斑は徐々に増加している(図 2).50 歳以降,3 度にわたり顔面に生じた基底細胞癌の切除術を受けている.手背・足背に皮疹はなく,神経学的な異常はない.患者細胞を用いた検査で予想される結果として最も考えられるのはどれか.

1. CS 遺伝子に変異が同定される.
2. 遺伝学的検査では確定診断できない.
3. 紫外線感受性試験で細胞の生存率はきわめて低い.
4. 紫外線照射後の RNA 合成回復能(RRS)は低下する.
5. 紫外線照射後の不定期 DNA 合成能(UDS)は正常である.

5

色素性乾皮症V型(xeroderma pigmentosum ; XP-V) あた235 色素性乾皮症診療ガイドライン参照

  1. コケイン症候(cockayne syndrome; CS)合併型で同定される.
  2. POHL遺伝子変異.
  3. XP-V以外のXP細胞は好感受性.
    XP-Vは軽度好感受性ないし正常,カフェイン添加により紫外線感受性が増強
  4. CS-A,-Bで低下する.XP-Vは正常値.

問題 13.メラニン合成について正しいのはどれか.

1. トリプトファンから合成される.
2. ケラチノサイト内で合成される.
3. 律速酵素は DHICA oxidase である.
4. 多くの日本人はフェオメラニン優位である.
5. 二重膜構造のメラノソーム内で合成される.

5

あた10-12

色素異常症まとめ参照.

  1. チロシンから合成
  2. メラノサイト内で合成
  3. 律速酵素はチロシナーゼ.DHICA oxidaseは別名TRP1と呼び,OCA3型の原因酵素.
  4. 黒色のユーメラニン(真性メラニン)優位.フェオメラニンは黄色メラニン.

メラノサイトの分布や密度に人種間の差異はなく,人種による色調の差異は,メラノソームの数と大きさにより決定.

問題 14.掌蹠の表皮に発現するタイプ I ケラチンはどれか.2 つ選べ.

1. keratin 1
2. keratin 5
3. keratin 9
4. keratin 17
5. keratin 25

3.4

マルホ皮膚科セミナー角化症を理解するための基礎皮膚科学参照

type 1 ケラチン 酸性 9-20,23-28

type 2 ケラチン 塩基性 1-8,71-80

type 1とtype 2ケラチンがペアで結合.

手掌,足底の表皮はK6,9,16,17が発現.そのうちtype 1なのは,9.16.17

ケラチン 主な発現部位 疾患
K1,10 有棘層 表皮融解性魚鱗癬
K2 顆粒層 表在性表皮融解性魚鱗癬
K3,12 角膜上皮細胞 Meesmann角膜ジストロフィ
K4,13 粘膜 白色海綿状母斑
K5,14 表皮の基底細胞 単純型表皮水疱症
K6A,16

Jadassohn-Lewandowsky 型先天性爪肥厚症

爪甲の過角化,掌蹠角化症,粘膜の白色の角化症,多汗症,時に水疱と毛孔角化症を伴う.

K6B,17

Jackson-Lawler 型の先天性爪肥厚症

粘膜病変は伴わず,爪甲の過角化,多発性脂腺囊腫(H30-10)などの毛包脂腺系の嚢腫、毛髪や歯の異常を伴う.

K9 掌蹠の有棘層から顆粒層の角化細胞 Vörner 型掌蹠角化症 

問題 15.Cornified cell envelope の主成分はどれか.

1. involucrin と filaggrin
2. involucrin と loricrin
3. keratin と filaggrin
4. keratin と involucrin
5. keratin と loricrin

2

あた9 周辺帯

有棘細胞で作られるインボルクリンと,顆粒細胞で作られるロリクリンが主成分.

これらの蛋白が角化のさいにトランスグルタミナーゼなどの酵素によって架橋されることで周辺帯が生じる.

ロリクリン角皮症 あた274

常染色体優性遺伝.

周辺帯を形成するロリクリン(LOR)遺伝子変異による角化症.

症状が手掌に限局し,ハチの巣状の掌蹠角化や手指の絞扼輪などを示す.

問題 16.図 3 にケラチン構造の模式図を示す.ケラチンの重合形成に重要で,ケラチン異常症の症例数が多い変異部位はどれか.

1. ①
2. ②
3. ③
4. ④
5. ⑤

3

マルホ皮膚科セミナー角化症を理解するための基礎皮膚科学参照

ケラチン遺伝子変異の多くが,1A内のHIMと1B内のHTMに同定される.

問題 17.アトピー性皮膚炎の痒みに直接関与すると考えられているサイトカインはどれか.3 つ選べ.

1. IL-4
2. IL-5
3. IL-13
4. IL-31
5. IL-36

1.3.4

デュピクセントは,IL-4とIL-13をブロックするのでかゆみに効く.

TSLPも痒みの関連で注目されている.

問題 18.T 細胞の機能抑制あるいは疲弊化に関与するのはどれか.3 つ選べ.

1. CD134(OX40)
2. CD137(4-1BB)
3. CD152(CTLA-4)
4. CD279(PD-1)
5. IDO(Indoleamine 2,3-dioxygenase)

3.4.5

PD-1とCTLA-4は皮膚科領域でもよく使用される免疫チェックポイント阻害薬.

IDOもT細胞の抑制の方向に働き,上記薬剤との併用療法が検討されてきている.

問題19.アレルゲンコンポーネント特異的IgE検査のうち正しい組合せはどれか.2 つ選べ.

1. 卵白 ――――――――Gal d 1
2. 牛乳 ――――――――Bos d 8
3. 大豆 ――――――――Ara h 2
4. ピーナッツ ―――――Bet v 1
5. ラテックス ―――――Gly m 4

1.2

アレルギーコンポーネントの名称は学名からきている.

細かい数字はわからなくても学名がわかれば解答できる.

  1. ○ 鶏 Gallus domesticus
  2. ○ 牛乳 Bos domesticus
  3. ✕ 大豆 Glycine max
  4. ✕ ピーナッツ Arachis hypogaea
  5. ✕ ラテックス Hevea brasiliensis 

シラカンバ Betula verrucosa

ちなみに,H30-記述6にGly m 4とBet v 1の関連の出題あり.

問題 20.60 歳の男性.両親はいとこ婚.幼少期から図4a に示す皮疹を露光部を中心に認める.病理検査では図 4b に示す所見が得られた.この疾患は,ある病原体に対する先天性免疫不全により発症する.その病原体はどれか.

1. Beta human papillomavirus
2. Candida albicans
3. Cytomegalovirus
4. Epstein-Barr virus
5. Malassezia globosa

1

疣贅状表皮発育異常症 あた497

  • 先天的にHPVに対する免疫不全により,全身に疣贅病変が生じる.
  • 常染色体劣性遺伝.TMC6, TMC8遺伝子変異.
  • HPV5,8,17,20
  • 幼少期から露光部に扁平疣贅や脂漏性角化症に似た角化性紅褐色斑が多発.癜風様の白斑や紅斑を伴うことがある.
  • 青年期以降の半数でSCC,BCC,Bowen病などを発症.
  • サンスクリーン外用で予防
  • レチノイド内服が効果的.
  • 病理は細胞質が明るく腫大した澄明変性細胞が有棘層上層に多く見られる.

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