H30-2018年度皮膚科専門医認定試験問題 61-80

平成30年度(2018年度)皮膚科専門医試験

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  1. 選択問題
    1. 問題 61.77 歳,男性.数年前から拡大している大腿の褐色局面を生検し,図 15a(HE染色),図 15b(DirectFast Scarlet 染色)の所見を得た.図 15b の真皮上層で橙赤色に染まっている物質の前駆物質はどれか.
      1. 1
    2. 問題 62.汗腺系腫瘍の説明で正しいのはどれか,3 つ選べ.
      1. 2.3.5
    3. 問題 63.線維上皮腫(Fibroepithelioma(Pinkus))は何の亜型か.
      1. 3
    4. 問題 64.42 歳,男性.数年前から下腹部に増大する結節で受診した.臨床像を図 16a に示す.皮膚生検で図 16b 及び図 16c の所見がみられた.図 16d の免疫染色はどれか.
      1. 4
    5. 問題 65.21 歳,男性.陰茎の多発性丘疹で受診した(図 17).ダーモスコピーにて規則正しい血管走行と乳頭腫の分割が観察され,病理組織では表皮内にウイルス封入体や ballooning を起こしている細胞はなかった.真皮に類似の病理組織所見を呈する病変が特徴的な疾患はどれか.
      1. 1
    6. 問題 66.メルケル細胞癌について誤っているのはどれか.
      1. 4
    7. 問題 67.頭部血管肉腫診療ガイドライン(日本皮膚科学会)で推奨度 B の治療法はどれか.2 つ選べ.
      1. 3.4
    8. 問題 68.日本人の悪性黒色腫患者の BRAF のコドンV600 における変異の最も多いのはどれか.
      1. 3
    9. 問題 69.66 歳,女性.初診の 1 年前に気づいた前胸部の結節を主訴に来院した.前胸部の臨床所見(図18a)と皮膚生検病理組織 HE 染色(図 18b)とS100 タンパクの免疫組織化学染色(図 18c)を示す.考えられる診断はどれか.
      1. 1
    10. 問題 70.腫瘍細胞が CD30 陽性となるのはどれか.2つ選べ.
      1. 2.5
    11. 問題 71.炎症性線状疣贅状表皮母斑の特徴で誤っているのはどれか.2 つ選べ.
      1. 2.4
    12. 問題 72.出生時より特徴的皮膚病変がみられるのはどれか.
      1. 4
    13. 問題 73.結節性硬化症で遺伝子検査で TSC1,TSC2 遺伝子のいずれにも機能喪失変異が見つからないとき,診断基準の大症状と小症状を診断に用いるが,大症状はどれか.3 つ選べ.
      1. 2.3.4
    14. 問題 74.37 歳,男性.下腿にやや硬く触れる小結節がある.ダーモスコピー所見(図 19)で最外側の微細な色素ネットワークに対応するのは主にどれか.
      1. 4
    15. 問題 75.手掌にみられた色素斑をダーモスコピーで観察した(図 20).最も考えられるパターンはどれか.
      1. 4
    16. 問題 76.臨床像を図 21a に,ダーモスコピー像を図21b に示す.最も考えられる診断はどれか.
      1. 1
    17. 問題 77.亜鉛欠乏症の 3 主徴はどれか.3 つ選べ.
      1. 2.3.5
    18. 問題 78.慢性活動性 EB ウイルス感染症について正しいのはどれか.2 つ選べ.
      1. 2.5
    19. 問題 79.壊死性遊走性紅斑について正しいのはどれか.2 つ選べ.
      1. 2.3
    20. 問題 80.以下の疾患のうち,太い膠原線維の増加を特徴とするものはどれか.3 つ選べ.
      1. 1.3.4

選択問題

問題 61.77 歳,男性.数年前から拡大している大腿の褐色局面を生検し,図 15a(HE染色),図 15b(DirectFast Scarlet 染色)の所見を得た.図 15b の真皮上層で橙赤色に染まっている物質の前駆物質はどれか.

1. ケラチン
2. アミロイド A 蛋白
3. トランスサイレチン
4. 免疫グロブリン L 鎖
5. β2 ミクログロブリン

1

あた315

ダイレクトファストスカーレット染色ではアミロイドが橙赤色に染まる.

病歴からアミロイドーシスの疾患を鑑別し,病理所見で真皮乳頭のアミロイド集積および,基底層のメラニン顆粒の増加より,アミロイド苔癬と診断し,その前駆体を選択させる問題.

  1. アミロイド苔癬の前駆蛋白.あた316.下腿前面,前腕伸側,背部に好発.病理は,真皮乳頭のアミロイド沈着,角質および表皮肥厚,基底層のメラニン顆粒の増加を認める.設問の病理所見もこれに矛盾ない.
  2. 反応性AAアミロイドーシスの前駆蛋白.あた318.慢性の炎症性疾患や感染症(関節リウマチ,SLE,結核)などに続発して発症.皮疹の形成は極めてまれ
  3. 家族性全身性アミロイドーシスの前駆蛋白.あた318.異型トランスサイレチン(ATTR)によって生じる.常染色体優性遺伝.アミロイドが神経,胃,心臓などに沈着.
  4. 結節性皮膚アミロイドーシスの前駆蛋白.あた317.顔面や体幹などに常色から赤褐色の硬い結節が単発or多発する.アミロイドは免疫グロブリンL鎖由来で,形質細胞浸潤を伴う.糖尿病や,シェーグレン症候群の合併が多い.亜型として中年女性の下腹部に黄褐色の萎縮性結節を生じる萎縮性結節性皮膚アミロイドーシスがある.ALアミロイドーシスの前駆蛋白でもある.
  5. 透析アミロイドーシスの前駆蛋白.あた318.長期血液透析患者でみられる.血液透析で除去されにくいβ2 ミクログロブリンが沈着.
疾患名 沈着アミロイド 前駆蛋白
皮膚限局性アミロイドーシス
(約2割)
原発性皮膚アミロイドーシス アミロイド苔癬 AD ケラチン?
斑状アミロイドーシス AD  
結節性皮膚アミロイドーシス AL 免疫グロブリンL鎖
肛門・仙骨部皮膚アミロイドーシス AD  
続発性皮膚限局性アミロイドーシス AD  
全身性アミロイドーシス
(約8割)
ALアミロイドーシス(約7割) AL 免疫グロブリンL鎖
反応性AAアミロイドーシス AA 血清アミロイドA
家族性全身性アミロイドーシス ATTR トランスサイレチン
透析アミロイドーシス Aβ2M β2-ミクログロブリン

問題 62.汗腺系腫瘍の説明で正しいのはどれか,3 つ選べ.


1. 汗管腫は自然消退することが多い.
2. エクリン汗孔腫は足底や手掌に好発する.
3. エクリンらせん腺腫は通常有痛性である.
4. 乳頭状汗腺腫は脂腺母斑に続発することが多い.
5. 乳頭状汗管嚢胞腺腫は頭部や顔面に好発する.

2.3.5

  1. あた412.エクリン汗腺の真皮内導管が限局性に増殖して,1-3mm大の常色扁平隆起性小丘疹を多発する.眼瞼部に好発.女性に多く,汗の分泌量が増加する思春期に目立つ.自然消退することはなく,液体窒素で膨らみを抑えるか,CO2レーザーなどで外科的に切除が必要.自然消退することが多いのはエクリン汗嚢腫.
  2. あた414.エクリン汗腺の表皮内導管由来の良性腫瘍.広基性(無茎性)ないし有茎性の小結節で胃出血性を示す.足底や手掌に好発.病理では,表皮から真皮内への腫瘍細胞(poroid cell)の増殖を認め,その中では好酸性の細胞が小管腔を形成するクチクラ細胞(cuticular cell)が見られる.まれに悪性化するため外科的切除.
  3. あた414.エクリン汗腺の真皮内導管および腺細胞への分化を示す良性腫瘍.顔面,頸部,体幹,上肢に単発する1-2cmの境界明瞭な硬い皮内および皮下結節.上面は常色or青色で自発痛や圧痛を伴う.
  4. あた416.アポクリン肝腺腫瘍の代表例.女性の外陰部に好発するドーム状小結節.びらんや出血を伴いやすく肉芽組織に類似する.病理では,アポクリン分泌像を示す腺上皮細胞の密な乳頭状増殖をみる.脂腺母斑に続発することが多いのは,乳頭状汗管嚢胞腺腫.
  5. あた416.小児の頭部や顔面に好発する疣状結節.表面は紅色で,ときにびらんを伴う.アポクリン汗器官性過誤腫で脂腺母斑に続発することが多い.病理では,内腔側に高円柱状細胞,外側に立方体状細胞の2層の環状構造をしめし,間質に形質細胞浸潤を伴う.

有痛性皮膚腫瘍の覚え方 ANGEL

A angiolipoma (血管脂肪腫),angioleiomyoma (血管平滑筋腫),angioblastoma Nakagawa (血管芽細胞腫(中川))

N neurilemmoma (神経鞘腫),neuroma (神経腫)

G glomus tumor (グロムス腫瘍),granular cell tumor (顆粒細胞腫)

E eccrine spiradenoma (エックリン螺旋腺腫)

L leiomyoma (平滑筋腫)

問題 63.線維上皮腫(Fibroepithelioma(Pinkus))は何の亜型か.


1. 汗孔腫
2. 軟性線維腫
3. 基底細胞癌
4. 神経線維腫
5. 皮膚混合腫瘍

3

あた444

基底細胞癌の亜型

結節(潰瘍)型(nodular BCC) 8割以上がこれ.硬い黒色小結節が癒合した外観.表皮に毛細血管拡張を伴う.潰瘍が進行したものを破壊型という.
表在型(superficial BCC) 体幹に好発.紅色~黒褐色の扁平隆起性浸潤性局面.
斑状強皮症型(morpheaform BCC) 楕円形の浸潤局面で中央がやや萎縮する.
Pinkus型(fibroepithelioma of Pinkus) 腰部や仙骨部に好発し,有茎性の小腫瘍が単発,多発.

BCCのリスク因子も要確認

皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第 3 版 基底細胞癌 診療ガイドライン 2021 より引用

問題 64.42 歳,男性.数年前から下腹部に増大する結節で受診した.臨床像を図 16a に示す.皮膚生検で図 16b 及び図 16c の所見がみられた.図 16d の免疫染色はどれか.


1. CD3
2. CD10
3. CD31
4. CD34
5. CD68

4

隆起性皮膚線維肉腫 DFSP:dernatofibrosarcoma protuberans あた461

成人男子の体幹に好発.

病理で花むしろ様配列(storiform pattern)をみとめ,核分裂像や異型性には乏しい.

腫瘍細胞は血液凝固因子XIIIa因子陰性,CD34陽性COL1A1-PDGFB融合遺伝子(H24-67,H29-69)を大部分の症例で認める.

転移をきたすことはまれ(10%以下)だが,局所再発が多いので広範囲に切除.

色素産生の強いものをBednar腫瘍という.

一部に線維肉腫様の病理所見(魚の背骨様:herringboneパターン)を伴うものは遠隔転移しやすいので注意.

  1. T細胞
  2. 胚中心のB細胞
  3. 血管内皮細胞
  4. 血管内皮細胞,DFSP
  5. マクロファージ,樹状細胞,顆粒細胞腫

組織染色参照.

問題 65.21 歳,男性.陰茎の多発性丘疹で受診した(図 17).ダーモスコピーにて規則正しい血管走行と乳頭腫の分割が観察され,病理組織では表皮内にウイルス封入体や ballooning を起こしている細胞はなかった.真皮に類似の病理組織所見を呈する病変が特徴的な疾患はどれか.


1. 結節性硬化症
2. 神経線維腫症 1 型
3. Queyrat 紅色肥厚症
4. 疣贅状表皮発育異常症
5. 青色ゴム乳首様母斑症候群

1

真珠様陰茎小丘疹 あた434

陰茎の冠状溝に1-3mm大のドーム状白色調の丘疹が列序性に多発.

血管線維腫で生理的なもの.

女性の小陰唇にみるものを膣前庭乳頭症(vestibular papillae of the vulva)という.

鼻部線維性丘疹 あた434 も血管線維腫の病理像をとる.

  1. あた394.顔面の多発血管線維腫,精神遅滞,てんかんの3主徴.TSC1TSC2遺伝子変異の常染色体優性遺伝.
  2. あた391.レックリングハウゼン病 von Recklinghausen disease RAS遺伝子機能を抑制する癌抑制遺伝子のニューロフィブロミンが原因遺伝子.
  3. あた451.陰茎に上じ,紅色で独特なビロード状局面を呈するBowen病をQueyrat 紅色肥厚症という.女性外陰部や口腔内にも生じる.SCCに移行しやすい.
  4. あた497.先天的なHPVに対する免疫異常を背景に,全身に疣贅病変が生じるまれな常染色体劣性遺伝性疾患.TMC6TMC8遺伝子異常.
  5. あた404.Bean症候群.青色ゴムまり様母斑症候群.全身の皮膚および消化管を中心とした内臓に生じる静脈奇形(海綿状血管腫).常染色体優性遺伝.小児慢性特定疾患情報センター「青色ゴムまり様母斑症候群」参照.

問題 66.メルケル細胞癌について誤っているのはどれか.


1. 高齢者に好発する.
2. 自然消退することがある.
3. 腫瘍巣は表皮に連続しない.
4. サイトケラチン 20 の染色で細胞質がびまん性に陽性となる.
5. メルケル細胞ポリオーマウイルス感染は一般人口の半数程度に認められる.

4

あた459

高齢者の露光部に好発する皮膚の神経内分泌系悪性腫瘍.悪性度が高く,原発性皮膚癌の中で最も予後不良なもののひとつとされ,その致死率は33%にも及ぶ.

  1. ○ 高齢女性の頭頚部に好発.
  2. ✕ CK20は細胞核の近傍に点状に染色する.
  3. ○ 皮膚ポリオーマウイルスの病原性解明とゲノム多型解析参照 健常者にも60-70%程度みられる.

問題 67.頭部血管肉腫診療ガイドライン(日本皮膚科学会)で推奨度 B の治療法はどれか.2 つ選べ.


1. 結節・潰瘍病変に対してのインターロイキン-2 局所投与
2. 多発性病変に対する外科的切除
3. 原発巣への放射線療法
4. タキサン系抗腫瘍剤の全身化学療法
5. 所属リンパ節転移に対するリンパ節郭清術または放射線療法

3.4

頭部血管肉腫診療ガイドライン参照

頭部だけでなく,皮膚に発生する血管肉腫全般を対象とする皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第 3 版 皮膚血管肉腫診療ガイドライン2021が発表された.

  1. C1
  2. 腫瘍が単発で最大径が5cm以下で,病理組織学的に完全切除が可能であればB,完全切除ができない場合はC1
  3. B 頭部血管肉腫の病変部辺縁から 3~5 cm 以上の範囲で骨膜までを含み,70~80 Gy の大量の電子線照射をすることが勧められる.頭蓋骨浸潤には X 線照射も考慮する.とくに強度変調放射線治療は優れた照射法である.
  4. B ちなみに原発巣に対する動注化学療法はC1
  5. リンパ節郭清,リンパ節転移に対する放射性療法ともにC1

遠隔転移に対する外科的切除C2

分子標的薬はC1

頭部血管肉腫の原発巣の緩和処置として,Mohs paste 外用,フェノール腐食法はC1

血管肉腫の肺遠隔転移による胸水,気胸の胸腔内療法は,胸膜癒着術がB,胸腔内免疫療法・胸腔内化学療法はC1

問題 68.日本人の悪性黒色腫患者の BRAF のコドンV600 における変異の最も多いのはどれか.


1. V600A
2. V600D
3. V600E
4. V600K
5. V600R

3

V600Eが95%,V600Kが5%.

問題 69.66 歳,女性.初診の 1 年前に気づいた前胸部の結節を主訴に来院した.前胸部の臨床所見(図18a)と皮膚生検病理組織 HE 染色(図 18b)とS100 タンパクの免疫組織化学染色(図 18c)を示す.考えられる診断はどれか.


1. 顆粒細胞腫
2. 黄色肉芽腫
3. 結節性黄色腫
4. 神経鞘腫
5. ランゲルハンス細胞組織球症

1

S100陽性であることから神経系腫瘍か,Langerhans細胞による腫瘍.

HEからシュワン細胞由来の大型多角形で好酸性顆粒を含んだ細胞を読み取って,顆粒細胞腫.

  1. あた421 3cm未満の小腫瘤.病理では,大型多角形で好酸性顆粒を含んだ細胞で構成される.ジアスターゼ抵抗性,PAS陽性,S-100陽性.
  2. あた436 若年性黄色肉芽腫.組織球系腫瘍.黄色~暗色調で表面平滑な数mm~1cm大の丘疹および結節.顔面,四肢,体幹に多発.生下時~生後数ヶ月以内に単発or多発し,通常は5-6歳までに自然消退する.病理では,組織球と黄色腫細胞,Touton型巨細胞(脂肪を貪食した組織球.多核巨細胞の核が花環状に配列し,その内側は好酸性で、核の外側は泡沫状の明るい細胞質が取り囲む.)からなる反応性肉芽腫.NF1合併例では白血病に注意.
  3. あた322 肘および膝などの四肢伸側や,手足の関節部に好発する.5mm-数cm大の隆起を伴う赤色~黄色調の硬い結節.高コレステロール血症(Ⅱ型)に伴う.
  4. あた420 シュワン細胞腫.軸索の髄鞘を形成するシュワン細胞由来の良性腫瘍.単独で発症し,NF2で多発する.圧痛を伴う.病理では,核に乏しい好酸性の部位からなる構造(Verocay body)がみられるAntoni A領域と,方向性がなく細胞成分の疎なAntoni B領域で構成される.Antoni B領域ではムチン沈着を伴う.
  5. あた480 H30-47参照

問題 70.腫瘍細胞が CD30 陽性となるのはどれか.2つ選べ.


1. MALT リンパ腫
2. リンパ腫様丘疹症
3. 節外性 NK/T 細胞リンパ腫
4. 原発性皮膚 γδT 細胞リンパ腫
5. 原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫

2.5

CD30はT細胞由来で陽性

  1. あた478 B細胞由来
  2. あた476 数mm~1cmまでの落屑を伴う紅褐色丘疹が体幹や四肢に出現し,中心に壊死や痂皮を伴うこともある.個疹は2~3週間で軽度の瘢痕,色素沈着を残して自然消退するが,繰り返して新旧の皮疹が混在する.病理ではCD30陽性の大型異型細胞や,赤血球漏出,好酸球浸潤などを認める.良性疾患に近く,ステロイド外用,PUVA療法などを行う.
  3. あた476 主にNK細胞の増殖による悪性リンパ腫.EBウィルスの関連が示唆されている.体幹や四肢に潰瘍を形成しやすい局面や皮下結節を生じる.
  4. CD3陽性で,CD4,8,30陰性が多い.
  5. あた475 CD30陽性リンパ球の浸潤による皮膚T細胞リンパ腫.多くは単発性の結節や丘疹で潰瘍化を伴うことが多い.予後は良好で,放射線療法や外科的切除が行われ,難治例では抗CD30抗体(ブレンツキシマブ ベドチン)も用いられる.
皮膚T細胞・NK細胞リンパ腫

菌状息肉症

Sézary症候群

成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)

原発性皮膚CD30陽性リンパ増殖症

  • 原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫
  • リンパ腫様丘疹症

皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫

節外性NK/T細胞リンパ腫、鼻型

種痘様水疱症様リンパ増殖症

原発性皮膚γ/δT細胞リンパ腫

原発性皮膚CD8陽性進行性表皮向性細胞障害性T細胞リンパ腫

原発性皮膚CD4陽性小型・中型T細胞リンパ増殖異常症

末梢性T細胞リンパ腫,非特定型

原発性皮膚末端型CD8陽性T細胞リンパ腫

皮膚B細胞リンパ腫

粘膜関連リンパ組織節外性辺縁帯リンパ腫(MALTリンパ腫)

 原発性皮膚辺縁帯B細胞リンパ腫

原発性皮膚濾胞中心リンパ腫

原発性皮膚びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、下肢型

リンパ腫様肉芽腫症

EBウイルス陽性粘膜皮膚潰瘍

血管内大細胞型 B 細胞リンパ腫

メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患

その他の造血系腫瘍

Langerhans細胞組織球症

芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍

皮膚白血病

多発性骨髄腫

問題 71.炎症性線状疣贅状表皮母斑の特徴で誤っているのはどれか.2 つ選べ.

1. 痒みを伴う.
2. 男児に好発する.
3. 上肢より下肢に多い.
4. 多くは思春期以降に遅発性に生じる.
5. 表皮に乳頭腫状肥厚がみられる.

2.4

あた385


  1. 疣贅状表皮母斑は,自覚症状は基本的になりが,そう痒や湿疹様変化を伴うこともある.設問の炎症性線状疣贅状表皮母斑(inflammatory linear verrucous epidermal nevus:ILVEN)は強い掻痒を伴う.
  2. 女児に多い.
  3. 下肢に好発.
  4. 幼少期から発生.
  5. 表皮の乳頭腫葉状の増殖をみる.顆粒変性をともなう.
  6. なうことがあり,その部位ではケラチン1/10の遺伝子異常を認める.

問題 72.出生時より特徴的皮膚病変がみられるのはどれか.


1. Birt-Hogg-Dube 症候群
2. Cole-Engman 症候群
3. Leopard 症候群
4. Peutz-Jeghers 症候群
5. Maffucci 症候群

4


  1. 皮膚症状(線維毛包腫,毛盤腫/血管線維腫,毛包周囲線維腫,アクロコルドン),肺嚢胞/気胸歴、腎腫瘍の3主徴.皮膚病変は典型的には20代~30代に現れ,年齢とともにサイズも数も増加していく.FLCN遺伝子変異.
  2. あた405 Zinsser-Cole-Engman症候群 先天性角化異常症.皮膚の網状色素沈着,爪甲変形,口腔粘膜の白板症様変化の3徴.幼児期から思春期に初発.網状の色素沈着が頸部から始まり,体幹や四肢へ拡大して多形皮膚萎縮となる.白板症様変化が舌,頬粘膜,外陰部に好発し,ときに悪性化する.再生不良性貧血や肺線維症などの全身臓器の異常も生じる.
  3. あた403 常染色体優性遺伝.Noonan症候群の亜型.眼間開離や眼瞼下垂などの特徴的な顔貌,低身長,翼状頚,肺動脈狭窄,精神遅滞などの臨床症状を特徴とする.RAS/MAPK経路に関わる遺伝子異常による.Lentignies:多発性黒子,Electrocardiographic condduction abnormalities:心電図異常,Ocular hypertelorism:両眼隔離,Pulmonary stenosis:肺動脈狭窄,Abnormalities of genitalia:生殖器異常,Retardation of growth:成長障害,Deafness:難聴.
    RAS/MAPK症候群(Noonan,CostelloCardio-faciao-cutaneous(CFC),LEOPARD症候群)
  4. あた397 STK11遺伝子変異による常染色体優性遺伝.口唇や口腔粘膜,掌蹠(とくに四肢末端)に左右対称に皮膚の色素沈着を認める.生下時から幼児期に出現し,加齢に伴って増大する.手指病変は成人期以降に消退しやすい.ダーモスコピーでは皮丘優位の色素増強をみる(parallel ridge pattern).
  5. あた405 先天性の中胚葉形成不全のため,皮膚や内蔵の脈管奇形と内軟骨腫をきたす.皮膚は静脈奇形(海綿状血管腫)が多く,毛細血管奇形やリンパ管奇形も見られる.

問題 73.結節性硬化症で遺伝子検査で TSC1,TSC2 遺伝子のいずれにも機能喪失変異が見つからないとき,診断基準の大症状と小症状を診断に用いるが,大症状はどれか.3 つ選べ.


1. 網膜無色素斑
2. 顔面の 3 個以上の血管線維腫または前額部,頭部の結合織よりなる局面
3. シャグリンパッチ
4. 2 個以上の爪囲線維腫
5. 多発性腎嚢腫

2.3.4

あた394 Bourneville-Pringle病

顔面の多発血管線維腫,精神遅滞,てんかんの3徴.

結節性硬化症の診断基準及び治療ガイドライン参照

A.遺伝子検査での診断基準
TSC1TSC2 遺伝子のいずれかに機能喪失変異があれば,TSC の確定診断に充分である.ただし,明らかに機能喪失が確定できる変異でなければ,この限りではない.また,遺伝子検査で原因遺伝子が見つからなくとも,結節性硬化症でないとは診断できない.
B.臨床診断の診断基準
大症状
  1. 3 個以上の低色素斑(直径が 5mm 以上)
  2. 顔面の 3 個以上の血管線維腫または前額部,頭部の結合織よりなる局面
  3. 2 個以上の爪囲線維腫(ungual fibromas)
  4. シャグリンパッチ(shagreen patch/connective tissue nevus)
  5. 多発性の網膜の過誤腫(multiple retinal nodular hamartomas)
  6. 大脳皮質の異型性(大脳皮質結節(cortical tube)・放射状大脳白質神経細胞移動線(cerebral white matter radialmigration lines)を含める)
  7. 脳室上衣下結節(subependymal nodule)
  8. 脳室上衣下巨大細胞性星状細胞腫(subependymal giant cell astrocytoma)
  9. 心の横紋筋腫(cardiac rhabdomyoma)
  10. リンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis LAM)*1
  11. 血管筋脂肪腫(angiomyolipoma)(2 個以上)*1
小症状
  1. 散在性小白斑(confetti skin lesions)
  2. 3 個以上の歯エナメル質の多発性小腔(multiple,randomly distributed dental enamel pits)
  3. 2 個以上の口腔内の線維腫(intraoral fibromas)
  4. 網膜無色素斑(retinal achromic patch)
  5. 多発性腎囊腫(multiple renal cyst)
  6. 腎以外の過誤腫(nonrenal hamartoma)
*1 lymphangioleiomyomatosis と renal angiomyolipoma の両症状がある場合は Definitive TSC と診断するには他の症状を認める必要がある.
Definitive TSC:大症状 2 つ,または大症状 1 つと小症状 2 つ以上
Possible TSC:大症状 1 つ,または小症状 2 つ以上

問題 74.37 歳,男性.下腿にやや硬く触れる小結節がある.ダーモスコピー所見(図 19)で最外側の微細な色素ネットワークに対応するのは主にどれか.


1. 古くなった角質
2. 角層内のメラニン
3. 表皮全層のメラニン
4. 表皮基底層のメラニン
5. 真皮乳頭部の微細な出血

4

問題 75.手掌にみられた色素斑をダーモスコピーで観察した(図 20).最も考えられるパターンはどれか.

1. 網状パターン
2. 線維状パターン
3. 格子状パターン
4. 皮丘平行パターン
5. 皮溝平行パターン

4

問題 76.臨床像を図 21a に,ダーモスコピー像を図21b に示す.最も考えられる診断はどれか.


1. 汗孔腫
2. 尋常性乾癬
3. 尋常性疣贅
4. 無色素性基底細胞癌
5. 無色素性悪性黒色腫

1

あた414

問題 77.亜鉛欠乏症の 3 主徴はどれか.3 つ選べ.

1. 舌炎
2. 下痢
3. 脱毛
4. 精神症状
5. 開口部および四肢末端の皮膚炎

2.3.5

あた323 亜鉛欠乏症参照

皮膚炎,脱毛,下痢の3主徴

常染色体劣性遺伝の,腸性肢端皮膚炎(SLC39A4(ZIP4)遺伝子)と,亜鉛摂取不足による後天性のもとに大別.

皮膚炎は,肢端,外陰部,開口部に紅斑,びらん

問題 78.慢性活動性 EB ウイルス感染症について正しいのはどれか.2 つ選べ.


1. 好発年齢は 30~50 歳である.
2. 血球貪食症候群を合併しうる.
3. 多くの症例では自然寛解が期待できる.
4. B 細胞リンパ腫の発症が予後を規定する重要な因子である.
5. 発熱・肝脾腫・リンパ節腫脹など,伝染性単核球症様の症状が慢性または反復性に持続する.

2.5

慢性活動性 EB ウイルス感染症とその類縁疾患の診療ガイドライン2016参照

  1. 東アジアの小児と若年成人が好発.
  2. ○ EBウイルス関連血球貪食性リンパ組織球症の発症が見られる.
  3. 一部の症例では自然寛解に至る可能性があるが,造血幹細胞移植や化学療法が必要なことが多い.
    種痘様水疱症は加齢により軽快し思春期には自然消退することが多い.
  4. T細胞・NK細胞リンパ腫の発症が問題になる.
  5. ○ 持続的な伝染性単核球症様症状(発熱,リンパ節腫脹,肝脾腫)を典型的な特徴とする.
慢性活動性 EB ウイルス感染症 (CAEBV) 診断基準(厚生労働省研究班、2015 年)
  1. 伝染性単核症様症状が 3 か月以上持続(連続的または断続的)
  2. 末梢血または病変組織における EB ウイルスゲノム量の増加
  3. T 細胞あるいは NK 細胞に EB ウイルス感染を認める
  4. 既知の疾患とは異なること
以上の 4 項目を満たすこと。

問題 79.壊死性遊走性紅斑について正しいのはどれか.2 つ選べ.


1. 多くの症例で末梢血好酸球増多を伴う.
2. アミノ酸補充により皮疹の治癒が期待できる.
3. 皮疹は躯幹・四肢の荷重部と間擦部に好発する.
4. 血中グルカゴン濃度が正常であれば本症を否定してよい.
5. 組織学的には表皮基底層の空胞変性と好酸性壊死を特徴とする.

2.3

あた146

主として低アミノ酸血症による皮膚症状.グルカゴノーマや肝硬変で生じる.多発性の不整形の丘疹ないし紅斑としてはじまり,遠心性に拡大癒合して,樹枝状,環状,地図状となる.表皮の剥離,,びらん,小水疱,汚褐色の痂皮など,様々な時期の病変が混在する.数週間の経過で増悪と軽快を繰り返す.グルカゴンの作用による二次性糖尿病を生じる.

  1. ✕ 高グルカゴン,低アルブミン.
  2. ○ 殿部,下肢,顔面など荷重部と間擦部に好発.
  3. グルカゴノーマを伴わなくても肝硬変などで生じる.
  4. 表皮上層に空胞変性と好酸球性壊死を伴う.

問題 80.以下の疾患のうち,太い膠原線維の増加を特徴とするものはどれか.3 つ選べ.


1. 汗管腫:Syringoma
2. 神経線維腫:Neurofibroma
3. 皮膚線維腫:Dermatofibroma
4. 青色母斑,通常型:Blue nevus,common type
5. 隆起性皮膚線維肉腫:Dermatofibrosarcoma protuberans

1.3.4

  1. あた412 オタマジャクシ様,コンマ状の膠原線維の増生
  2. あた420 紡錘形腫瘍細胞の増生を認め,その間に細く波状にうねった膠原線維が錯綜する.
  3. あた432 DFSPよりも膠原繊維が太い.
  4. あた382 真皮中層から深層にかけて真皮メラノサイトが増生.病変部の膠原繊維は密の増生.
  5. あた461 腫瘍細胞および線維が渦を巻くように配列する「花むしろ様配列」が特徴.皮膚線維腫よりも膠原繊維が細い.

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