食物アレルギーまとめ

皮膚科専門医試験対策

クラス1食物アレルギー


古典的な概念の食物アレルギーで,感作抗原とアレルギー発症たんぱく質が基本的に同一.臨床症状としては蕁麻疹,下痢,嘔吐,ショック等が一般的で全身症状をきたす場合が多い.乳幼児における未成熟な腸管膜の抗原透過性や免疫寛容の不完全性などが発症基盤となる.一部の抗原(ソバ、エビ、カニなど)を除いて成長とともに自然治癒(アウトグロー)する場合が多い.このクラスのアレルギー惹起食品としては,卵,乳,小麦,大豆などの主要たんぱく食源が多い.

クラス2食物アレルギー


花粉抗原よる粘膜(気道)感作やラテックス(天然ゴム)抗原による皮膚を介したアレルゲン感作が先行し,その後,植物性食品中に広く存在する類似たんぱく質が交差反応を起こしてアレルギー臨床症状を惹起する.

  感作 アレルゲン 食物アレルギー
花粉ー食物アレルギー症候群(PFAS) 花粉 PR-10, Profilin 果物,野菜
ラテックス・フルーツ症候群

ラテックス

経気道・経皮

ヘベイン等 バナナ,アボガド,栗,キウイ
納豆アレルギー クラゲ刺傷 ポリガンマグルタミン酸(PGA) 納豆
Pork-cat症候群

猫の血清Alb(Fel d 2)

経気道

豚の血清Alb(Sus s) 豚肉
牛肉アレルギー マダニ咬傷 α-Gal;galactose-α-1,3-galactose 牛肉
Bird-egg症候群

鶏の羽,糞

経気道

鶏の血清Alb(α-リベチン;Gal d 5) 卵黄(鶏肉もあることも)

花粉-食物アレルギー症候群(PFAS: Pollen-food allergy syndrome)

  • 特定の花粉に感作された後その花粉との交差反応によって発症する食物アレルギー.
  • 原因食品は植物性食品が多い.
  • 原因食品摂取直後に口腔咽頭症状が限局して現れることが多い.
  • 口腔アレルギー症候群(Oral allergy syndrome:OAS)と呼ばれることがある.
  • 消化過程でエピトープが壊れやすいために口腔咽頭に限局すると考えられており,加熱すれば食べられることが多い.
  • 豆乳,スパイスなどアナフィラキシーを起こしやすいPFASは厳格な除去が必要なこともある.

ハンノキ,シラカンバ

Bet v1関連タンパク(Pathogenesis-related protein type10: PR-10)
  • カバノキ科(シラカンバ,ハンノキ)花粉の感作の9割がBet v 1で,Bet v1関連タンパク(Pathogenesis-related protein type10: PR-10)との交差反応が見られる.
  • PR-10はバラ科の果物(サクランボ,リンゴ,モモ,ビワな,ナシ)との交差に注意が必要.
  • 抗原は加熱などで失活しやすいのでImmunoCAPで偽陰性になることがある.
  • PR-10によるPFASを疑った場合は特異的IgE検査のGly m 4が保険収載されているので,これを調べてみると陽性になることが多い.
Profilin
  • カバノキ科(シラカンバ,ハンノキ)花粉の感作の残り1-2割がBet v 2(Profilin)の感作で幅広い花粉と交差する.
Bet v1関連タンパクとProfilinとの交差状況
  花粉 食べ物  
  樹木 草木 雑草 果物 野菜 豆類 ナッツ類 ラテックス
PR-10

Aln g 1

ハンノキ

Bet v 1

シラカンバ

Car b 1

シデ

Cas s 1

グリ

Cor a 1

ハシバミ

なし なし

Mal d 1

リンゴ

Pru p 1

モモ

Pru av 1

サクランボ

Pyr c 1

ナシ

Act c 8

キウイ

Act d 8

キウイ 

Api g 1

セロリ

Dau c 1

ニンジン

Gly m 4

大豆

Vig r 1

緑豆

Ara h 8

ピーナッツ

Cor a 1.04

ヘーゼルナッツ

なし
Profilins

Bet v 2

シラカンバ

Car b 2

シデ

Cor a 2

ハシバミ

Ole e 2

オリーブ

Pho d 2

ナツメヤシ

Phl p 12

オオアワガエリ

Zea m 12

トウモロコシ

Cyn d 12

ギョウシバ

Amb a 8

ブタクサ

Art v 4

ヨモギ

Mal d 4

リンゴ

Pru p 4

モモ

Pru av 4

サクランボ

Pyr c 4

ナシ

Act d 9

キウイ
Fra a 4 イ

チゴ

Cuc m 2 

メロン

Mus xp 1 

バナナ

Cit s 2 

オレンジ

Api g 4

セロリ

Dau c 4

ニンジン

Cap a 2

ピーマン

Gly m 3

大豆

Ara h 5

ピーナッツ

Cor a 2

ヘーゼルナッツ

Pru du 4

クルミ

Hev b 8

ラテックス

 

スギ,ヒノキ

ジベレリン制御タンパク(GRP: Gibberellin-regulated protein)

近年,スギ Cry j 7やヒノキ Cup s 7の花粉と交差反応を示すジベレリン制御タンパク(GRP: Gibberellin-regulated protein)も注目されており,サクランボ Pru av 7,ウメ Pru m 7,モモ Pru p7,オレンジ Cit s 7,ザクロ Pun g 7と交差する.

牛肉アレルギー

  • 牛肉アレルギーは牛肉の摂取からアレルギー発症までの時間が3-5時間と一番多く,1/4の症例では5時間以上であり,すぐアレルギー症状がでるわけではないので注意が必要.
  • B型,AB型はなりにくく,A型,O型が多い.
  •  牛肉の主要抗原が,α-Gal(galactose-α-1,3-galactose)であり,EGFRモノクローナル抗体製剤のセツキシマブや,カレイ魚卵に交差する.
  • マダニの唾液中にα-Galが含まれており,マダニに噛まれることによって感作される.

Bird-egg症候群

鳥の羽毛や糞に含まれる鳥の血清Alb α-リベチン(Gal d 5)を吸入することによって感作され,鶏肉や卵黄にふくまれるGal d 5によって即時型の食物アレルギー症状をおこす.成人女性に多い.鶏卵と鶏肉のコンポーネントは,Gal d 1のオボムコイドのみ保険適応なので注意.
養鶏場や,職業性での報告はほぼなく,換気がしっかり行われていたり,マスクや手袋が推奨されているためと考えられている.

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