R1-2019年度皮膚科専門医認定試験問題 61-80

令和1年度(2019年度)皮膚科専門医試験

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選択問題

問題 61.18 歳の女性.市販の鎮痛薬や総合感冒薬を時々内服している.数か月前より,薬剤内服 1~2 日後に下口唇右側にピリピリ感が生じ,内服する度に同症状が出現している.同部には軽度の色素沈着がみられる(図 13).市販薬に含まれる NSAIDs の内服では同症状は出なかった.原因として可能性が高いと考えられるのはどれか.2 つ選べ.

1. カルボシステイン
2. グリチルリチン酸
3. リゾチーム塩酸塩
4. クレマスチンフマル酸塩
5. アリルイソプロピルアセチル尿素

1.5

固定薬疹 あた154

右口唇に色素沈着局面に一致した紅斑が生じており,病歴からも固定薬疹を示唆する.

ときに水疱を形成することもある.

表皮真皮境界部に存在するCD8+T細胞が薬剤により活性化されて生じるとされる.

アセトアミノフェン,イブプロフェン,カルボシステイン,メフェナム酸,アリイソプロピルアセチル尿素,エテンザミド,ミノサイクリンの固定薬疹の報告が多い.

問題 62.納豆アレルギーについて正しいのはどれか.2 つ選べ.

1. 用量依存性に症状が起きる.
2. サーファーに罹患率が高い.
3. プリックテストは通常陰性である.
4. 摂取2 時間以内に蕁麻疹,呼吸困難などの症状が生じ遷延する.
5. 納豆以外の大豆食品(醤油・豆腐・味噌)にもアレルギーを起こす.

1.2

新・皮膚科セミナリウム 経皮感作とアレルギー1.動物と経皮感作型食物アレルギー 猪又 直子 2021 年 131 巻 3 号 p. 491-497 参照

  1. クラゲに刺されることによってPGAに感作され発症する.
  2. プリックテストは通常陽性
  3. 遅発性発症で,症状発症までに半日程度かかる.
  4. 他の大豆食品とのアレルギーの合併はまれ.

問題 63.蕁麻疹について正しいのはどれか.

1. Schnitzler 症候群には一般に抗ヒスタミン剤が有効である.
2. オマリズマブは気管支喘息合併蕁麻疹患者には禁忌となっている.
3. 遅延性圧蕁麻疹にはステロイド内服が有効である.
4. アスピリン蕁麻疹患者には,COX1選択性が高い消炎鎮痛薬を用いる.
5. 難治性蕁麻疹の治療薬としてブラジキニン B2受容体拮抗薬(イカチバント)が保険収載された.

3

蕁麻疹診療ガイドライン参照

  1. ✕ 抗ヒスタミン剤は無効で,ステロイド内服が有効
  2. ✕ もともとオマリズマブは気管支喘息の治療薬として蕁麻疹より先に適応が取っていた.
  3. ○ 物理性蕁麻疹の中で唯一ステロイドの内服の有効性が知られている.
  4. ✕ COX1阻害作用によって蕁麻疹の症状がでるので,COX阻害作用のないアセトアミノフェンか,チアラミド塩酸塩か,COX2選択性が高い薬剤を使用する.
  5. ✕ イチカバンドは遺伝性血管性浮腫に適応.

問題 64.口腔アレルギー症候群でリンゴやモモとの関連が最も高いのはどれか.2 つ選べ.

1. ヒノキ
2. カモガヤ
3. ハンノキ
4. ブタクサ
5. シラカンバ

3.5

食物アレルギー参照

花粉-食物アレルギー症候群(PFAS: Pollen-food allergy syndrome)で,りんごとモモの関連が高いのは,Bet v1関連蛋白によるPFAS.これを疑った場合,大豆のGly m 4が保険収載されているので,これを調べると陽性になることが多い.

問題 65.RASopathies(RAS/MAPK シグナル伝達経路に存在する遺伝子の異常によって生じる一連の症候群)に含まれる疾患はどれか.3 つ選べ.

1. Legius 症候群
2. 神経線維腫症 1 型
3. 神経線維腫症 2 型
4. LEOPARD 症候群
5. McCune-Albright 症候群

1.2.4

新・皮膚科セミナリウム 母斑症・遺伝性疾患1.神経線維腫症1型(診断・治療の現状と最近の知見)吉田 雄一 2015 年 125 巻 12 号 p. 2259-2266より出題

あた402

NF1は RAS mitogen activated protein kinase(MAPK)経路を負に制御しており,この経路に関わるRASopathiesと呼ばれる疾患群は症状がオーバーラップするため,主な鑑別疾患となる.

RASopathiesは,Legius症候群, LEOPARD症候群,Noonan症候群,Cardio-Facio-Cutaneous症候群,Costello症候群があげられどれもカフェオレ斑を生じる.その他のカフェオレ斑を生じる疾患として, McCune-Albright 症候群,Porteus症候群 があげられる.

問題66.28歳の女性.幼少期より掌蹠の角化が顕著であった.さらに,皮膚症状だけでなく,進行性の感音性難聴も合併している.また,家系内に罹患者が複数存在する.図 14a に患者の足底の写真を,図14b に家系図を示す.本症例で最も考えられる遺伝形式はどれか.

1. 母性遺伝
2. 常染色体優性遺伝
3. 常染色体劣性遺伝
4. 伴性優性遺伝
5. 伴性劣性遺伝

1

家系図は母親が罹患すると子供はすべて発症しているが,父親が罹患しても発症しておらず,母系遺伝の遺伝形式を示している.

疾患は,ミトコンドリア遺伝神経性難聴合併型掌蹠角化症.

問題 67.自己炎症症候群の 1 つで,プロテアソーム不全病とも言われ,不明熱・関節拘縮・脂肪萎縮症,凍瘡様皮疹などを特徴とし,PSMB8の遺伝子変異で生じる疾患はどれか.

1. 家族性地中海熱
2. 中條・西村症候群
3. 家族性寒冷自己炎症症候群
4. 家族性凍瘡状エリテマトーデス
5. Job 症候群(Hyper-IgE recurrent infectionsyndrome)

2

自己炎症性疾患参照

  1. あた217 MEFV遺伝子変異のAR.
  2. あた218 ○
  3. あた217 NLRP3遺伝子変異.蕁麻疹との鑑別が必要.
  4. TRX1遺伝子変異.AD.

問題 68.ステロイド骨粗鬆症の予防に使用される経口ビスホスホネート薬のうち週 1 回服用するのはどれか.2 つ選べ.

1. アレンドロン酸ナトリウム水和物(フォサマックⓇ・ボナロンⓇ)5 mg
2. アレンドロン酸ナトリウム水和物(フォサマックⓇ・ボナロンⓇ)35 mg
3. リセドロン酸ナトリウム水和物(アクトネルⓇ・ベネットⓇ)17.5 mg
4. リセドロン酸ナトリウム水和物(アクトネルⓇ・ベネットⓇ)75 mg
5. ミノドロン酸水和物(リカルボンⓇ・ボノテオⓇ)50 mg

2.3

ステロイド骨粗鬆症ガイドラインまとめ参照

アレンドロン酸ナトリウム水和物は,5mg/D,35mg/W

リセドロン酸ナトリウム水和物は,2.5mg/D,17.5mg/W,75mg/M

ミノドロン酸水和物は1mg/D,50mg/4W

問題 69.弾性線維性仮性黄色腫の重症度分類において評価される皮膚以外の病変はどれか.3 つ選べ.

1. 眼
2. 内分泌
3. 呼吸器
4. 消化器
5. 心・血管

1.4.5

弾性線維性仮性黄色腫診療ガイドラインまとめ参照

あた353

問題 70.亜鉛欠乏症について正しいのはどれか.3 つ選べ.

1. 易感染性が認められる.
2. Beau’s line などの爪変形がみられる.
3. 血清亜鉛は午後に測定することが望ましい.
4. 血清アルカリフォスファターゼが低値となる.
5. 腸性肢端皮膚炎の 3 主徴は皮膚炎,下痢,精神障害である.

1.2.4

亜鉛欠乏症まとめ参照

  1. 早朝空腹時に測定するのがのぞましい.
  2. ○ 
  3. 皮膚炎,下痢,脱毛が正解

問題 71.piezogenic pedal papules で誤っているのはどれか.

1. 足に好発する.
2. 高齢者に好発する.
3. 弾性軟の病変である.
4. 圧迫が取れると消失する.
5. 弾性線維の断裂を認める.

2

piezogenic pedal papules

  • 立位などによって足底に圧力がかかることによってで踵部内側に出現し,圧力がかからなくなると消失する丘疹.
  • 脂肪組織の真皮への陥入.
  • 疼痛を伴う場合と伴わない場合とがある.
  • 生検では必ずしも病態を捉えることができず,エコーが有効.
  • 肥満,立ち仕事など下肢に負担がかかることが誘引.
  • 治療法はない.
  • 健常人でも認められる.

問題72.58歳の女性.鼻背部の黒色斑が気になり受診した.いつ頃から生じたものかは分からないという.初診時の臨床写真を図 15 に示す.この疾患について正しいのはどれか.

1. 面皰圧出が治療の第一選択である.
2. 過酸化ベンゾイルの外用が推奨される.
3. 増殖してもびらんや潰瘍化することは稀である.
4. 典型例では,辺縁に黒色の蝋様光沢を有する小結節が並ぶ.
5. ダーモスコピーで観察される特徴的な血管所見は,コンマ状血管である.

4

基底細胞癌 あた444

  1. 面疱
  2. 尋常性ざ瘡
  3. 悪性腫瘍であるので✕
  4. arborizing vessel(樹枝状血管)であれば○
    コンマ状血管は真皮浅層に占拠病変が生じ,表皮圧排される状況で生じる.占拠病変によって,血管が迂回せざる負えなくなるため,血管が表皮直下を通りコンマ状の所見を呈する.真皮内母斑で生じる.
    ヘアピン状血管は,長く伸びた真皮乳頭でUターンする毛細血管が,細長く平行に走ることでヘアピン状にみえるもので,疣贅や,脂漏性角化症,ケラトアカントーマ,汗孔腫などでみられる.

問題73.62歳の男性.左上腕に半年前からある小結節を切除し,図 16a,b の所見を得た.病理診断はどれか.

1. Inverted follicular keratosis
2. Keratoacanthoma
3. Solar keratosis
4. Squamous cell carcinoma
5. Verruca vulgaris

みき先生の皮膚病理診断ABC 1表皮系病変 80

Inverted follicular keratosis

  • 毛嚢上皮へのHPV感染症あるは,毛嚢上皮に発生したirritated typeの脂漏性角化症のどちらかないし両方が混在したもの.
  • 毛嚢一致性で,外向性に加え内向性に増殖.
  • squamous eddiesが必発.
  • HPV感染が主体になれば,乳頭頂部の錯角化は多顆粒細胞が目立つ.
  • irritated typeの脂漏性角化症が主体となれば,毛嚢基底細胞の増生,変性像,炎症細胞浸潤が目立つ.

問題74.68歳の女性.左手掌の黒色斑を家族に指摘され受診した.臨床写真とダーモスコピー像を図17に示す.誤っているのはどれか.

1. 皮疹の色調が多彩である.
2. 皮疹の左右が非対称である.
3. 皮疹の辺縁が不明瞭である.
4. 提示したダーモスコピーは,parallel furrow pattern を呈している.
5. 提示したダーモスコピーでは,有意な血管所見は観察されない.

4

悪性黒色腫のダーモスコピー画像.

parallel ridge patternを示しているので4が✕

問題 75.Trametinib の標的分子はどれか.

1. BRAF
2. EGFR
3. ERK
4. MEK
5. NRAS

4

悪性黒色腫でBRAF遺伝子変異(V600E, V600K)がある場合は,シグナル阻害薬の適応となる.

ダブラフェニブ+トラメチニブ or ベムラフェニブ

  • ダブラフェニブ(タンフィラー®),ベムラフェニブ(ゼルボラフ®)はBRAF阻害薬
  • トラメチニブ(メキニスト®)はMEK阻害薬

免疫チェックポイント阻害薬

  • ニボルマブ(オブジーボ®),ペムブロリズマブ(キイトルーダー®)はPD-1阻害薬
  • イピリムマブ(ヤーボイ®)はCTLA-4阻害薬

問題76.50歳代の男性.腓腹部の圧痛を伴う皮下腫瘤を主訴に受診し(図 18a),超音波検査の結果,図18b,c の所見を得た.最も考えられる疾患はどれか.

1. 血腫
2. 毛母腫
3. 神経鞘腫
4. 表皮囊腫
5. 血管脂肪腫

3

  1. 内部にドップラーの血流はない.
  2. 切開化上皮腫.内部に血流はない.深部にacoustic shadow.
  3. ○ あた420 有痛性腫瘍.Antoni A領域が高エコーに,Antoni B領域が低エコーに描出される.内部血流もある.
  4. 粉瘤.内部にドップラーの血流はない.
  5. 有痛性腫瘍だが,脂肪組織は高エコー
有痛性皮膚腫瘍の覚え方 ANGEL

A angiolipoma (血管脂肪腫),angioleiomyoma (血管平滑筋腫),angioblastoma Nakagawa (血管芽細胞腫(中川))

N neurilemmoma (神経鞘腫),neuroma (神経腫)

G glomus tumor (グロムス腫瘍),granular cell tumor (顆粒細胞腫)

E eccrine spiradenoma (エックリン螺旋腺腫)

L leiomyoma (平滑筋腫)

問題77.図19の①~⑤の超音波検査(ドップラーモード)の所見のうち最も良性腫瘍を考える所見はどれか.

1. ①
2. ②
3. ③
4. ④
5. ⑤

4

問題 78.図 20 に病理組織像 HE 染色所見を示す.組織学的にこの部位に観察されるメラニンは,皮疹を肉眼的に見た際に何色として観察されるか.

1. 黒色
2. 白色
3. 黄色
4. 茶色
5. 青色

5

青色母斑

問題 79.間葉細胞系母斑で誤っている組み合わせはどれか.

1. 貧血母斑 ――――――――神経線維腫症 1 型
2. 軟骨母斑 ――――――――副耳
3. 平滑筋母斑 ―――――――多毛
4. 結合織母斑 ―――――――粒起革様皮膚
5. 表在性皮膚脂肪腫性母斑 ―片側性下肢肥大

5

  1. あた390 入浴や摩擦などによって周囲の皮膚が紅潮した際に,境界鮮明に蒼白部位が出現するもの.上胸部に好発.毛細血管の機能障害と言われる.NF1や結節性硬化症に好発.
  2. あた388 軟骨を含んだ半球状の正常皮膚色の丘疹.耳周囲に生じたものを副耳という.胎児鰓弓発生障害に伴う.
  3. あた388 平滑筋過誤腫.立毛筋の過誤腫.腰部や仙骨部に好発.生後6ヶ月で発症することが多い.境界がやや不明瞭な淡褐色斑.しばしば多毛を伴う.
  4. あた388 結節性硬化症で膠原線維が増生し,粒起革様皮膚を生じる.
  5. あた388 脂肪組織が真皮内で異所性に増殖.
    片側性下肢肥大は,Klippel-Trenanay-Weber症候群.

問題 80.45歳の男性.足底の紅色結節を主訴に受診した(図 21a).ダーモスコピー像(図 21b)を示す.ダーモスコピー像の紅色領域(Ⓐ)に対応するのは,組織像(図 21c)の①~⑤のどれか.

1. ①
2. ②
3. ③
4. ④
5. ⑤

2

汗孔腫 あた414
ヘアピン状血管

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