色素異常症

皮膚科専門医試験対策

メラニン合成経路

  • メラニンの合成は脂質二重膜で囲まれたメラノソーム内でのみ合成される.
  • メラノソームはメラノサイト内に存在する.
  • 合成の過程で,システインが存在すると,黄色のフェオメラニンが合成され,存在しないと黒色のユーメラニンが合成される.
  • 日本人は黒髪であり,ユーメラニン優位.(R1-13)

色素脱失する疾患と病態

  病態 病名

遺伝子

脱色素斑

先天性 メラノサイト分化・発生・遊走に関わる遺伝子異常 まだら症

c-KIT(AD)

完全

Waardenburg症候群 PAX3, MITF, END3, ENDRB, SOXなど(AD) 完全
メラノサイトの生存(自己免疫を含む)に関わる遺伝子の異常 遺伝性対側性色素異常症(遠山) ADAR1(AD)  
メラニン合成に関わる適伝子の異常 眼皮膚白皮症(非症候型) TYR, P, TYRP1, SLC45A2, SLC24A5, C10orf11(AR)  
メラノソームを含む複数の細胞内小器官合成・成熟・輸送に関わる遺伝子異常 Hermansky-Pudiak症候群 HPS1 AP3B1, HPS3, HPS4HPS5, HPS6, DTNBP1, BLOC1S3, PLDN(AR)  
Chediak-東症候群 LYST(AR)  
Griscelli症候群 MYO5A, RAB27A, MLPH(AR)  
代謝異常によるメラニン合成障害 フェニルケトン尿症 PAH(AR)  
モザイク?による色素低下 脱色素性母斑 非遺伝子性 不完
低色素症(伊藤)   不完
過誤腫による色素低下 結節性硬化症(プリングル病) TSC1, TSC2(AD) 不完
後天性 メラノサイトの生存(自己免疫を含む)に
間わる疾患
尋常性白斑   完全
Sutton白斑   完全
Vogt-小柳-原田病   完全
メラノサイトの機能低下 老人性白斑(特発性滴状色素減少症)   不完
何らかの炎症による白斑 海水浴後白斑   不完
梅毒性白斑   不完
炎症後脱色素斑   不完

まだら症

  • c-KIT(AD)
  • メラノサイト分化・発生・遊走に関わる遺伝子異常で白斑部にはメラノサイトがほとんど観察されない.
  • 90%の症例で前額部の三角からひし形の白斑部を認め,white forelockという.
  • まだら症に虹彩異色症,顔面形成異常,先天性難聴をともなうのが,Waardenburg症候群

遺伝性対側性色素異常症(遠山)(DSH)

  • ADAR1(AD)
  • ADAR1遺伝子変異により皮膚のメラノサイトがアポトーシスされやすくなることにより脱色素斑や反応性の黒色斑が起きるのでないかと言われている.
  • 患部ではメラノサイトが減少している.
  • 四肢末端に褐色斑と脱色素斑
  • 顔面に雀卵斑
  • 6歳頃までに発症し,10歳頃までに完成
  • アジア人に好発
  • 遺伝性汎発性色素異常症,網状肢端色素沈着症,Dowling-Degoes病との鑑別が必要.(R1-60R2-45

遺伝性汎発性色素異常症(DUH)

  • DSHの褐色斑と脱色素斑が全身に認める.
  • 3つのサブタイプに分類.
    DUH1;chr.6q24.2-q25.2(AD),DUH2;chr.12q21-q23(AR),DUH3;ABCB6(AD)

網状肢端色素沈着症

  • ADAM10(AD)
  • 掌蹠に点状の陥凹
  • 褐色斑は認めるが,脱色素斑は認めない.
  • 症状は20歳までには完成し生涯に渡って続く.

Dowling-Degoes病

  • 暗褐色の角化性小丘疹と網状色素斑が四肢および体幹にみられる.
  • 思春期移行に発症し進行性
  • 口周囲の陥没性ざ瘡様丘疹などの報告も.
  • 頭髪や爪に異常はみられない.
  • 4種類のサブタイプに分類
    DDD1;KRT5(AD), DDD2;POFUT1(AD), DDD3;chr.17p33.3, DDD4;POGLUT1(AD)

眼皮膚白皮症

  • 生下時から皮膚,髪,眼の色素が減少ないし消失.
  • 重症例では,白毛,羞明,視力障害,眼振を伴う.幼少期に蒙古斑を認めない.
  • 光線過敏症のため皮膚悪性腫瘍を合併しやすい.
  • 非症候型と症候型に分類
  • 日本ではOCA4>OCA1>HPS1>OCA2の順に多い.(Okamura K et al. Pigment Cell Melanoma Res. 2021 Mar;34(2):190-203.)ガイドラインのデータが古いので注意.
  • 2017年7月に指定難病に加えられた.
  病型 非症候型(遺伝子),症候型(症候の内容)
非症候型 OCA1型 チロシナーゼ遺伝子(TYR)関連型
OCA2型 P関連型
OCA3型 TYRP1関連型
OCA4型 SLC45A2(MATP)遺伝子型
症候型 Hermansky-Pudiak症候群
  • 眼皮膚白皮症+出血傾向+セロイド・リプフスチン様物質の全身組織への沈着.
  • 間質性肺炎,肉芽腫性大腸炎,腎不全,心筋症が予後を決定する.
Chediak-東症候群
  • LYST遺伝子異常により微小管の機能異常を起こす.
  • 光線過敏
  • リンパ増殖性疾患,血球貪食症候群を生じて予後不良に.
  • 好中球性免疫低下により易感染性.
  • 抹消白血球に巨大リソソーム顆粒(ペルオキシダーゼ陽性)を認める.(H28-46)
Griscelli症候群
  • 神経症状
  • 易感染性
  • 汎血球減少

難病指定重症度分類

A.症候型の眼皮膚白皮症(ヘルマンスキー・パドラック症候群、チェディアック・東症候群、グリセリ症候群)と診断され、以下の症状のうち少なくとも一つを満たす場合。
1.ヘルマンスキー・パドラック症候群
矯正不能な視力障害(良好な方の眼の矯正視力が0.3未満)、血小板機能障害による出血、汎血球減少、炎症性腸疾患、肺線維症
2.チェディアック・東症候群
急性増悪状態(発熱と黄疸をともない、肝脾腫、全身のリンパ節腫脹、汎血球減少、出血傾向を来した病態)、繰り返す全身感染症、神経症状(歩行困難、振戦、末梢神経障害)
3.グリセリ症候群
てんかん、筋緊張低下、末梢神経障害、精神発達遅滞、汎血球減少、繰り返す全身感染症
 
B.非症候型の眼皮膚白皮症と診断され、さらに良好な方の眼の矯正視力が0.3未満である。
 
判定:
A.あるいはB.を満たす場合、重症とし、対象とする。

脱色素性母斑

  • 出生時あるいは出生時まもなく出現する不完全脱色素斑.
  • モザイク説,メラノソーム伝達障害説がある.
  • 大きさ,分布,数は変化しない.
  • R2-72

尋常性白斑

  • 白なまず
  • 後天的にメラノサイトが減少ないし消失
  • 20歳前後の若年者に多く,人口の約1%が罹患.
  • 全身に生じる汎発型,神経支配領域に沿って片側性に生じる分節型,口囲と指趾に限局する肢端顔面型などに分類.
  • 完全脱色素斑で周囲には増強する色素沈着がみられるのが特徴.
  • Köebner現象陽性.

Sutton白斑

  • 中心の黒子部に存在するメラニンに対する自己免疫が生じ,その免疫反応が周囲皮膚メラニンに対しておこるために生じる.

Vogt-小柳-原田病

  • メラノサイト,チロシナーゼ,TYRP1などに対する細胞性免疫によって発症.
  • ぶどう膜炎,皮膚,内耳,髄膜に炎症を生じ,ぶどう膜炎,白毛,脱毛,白斑,難聴,髄膜炎を生じる.
  • HLA-DR4,DR53と強い相関がある.
  • 早期に大量ステロイドの全身投与が必要.

老人性白斑(特発性滴状色素減少症)

  • メラノサイトの老化による機能低下
  • 活性化メラノサイト,メラノソームの数の低下

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